たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
それは聖書と哲学書を合わせたような
「人はパンのみに生きるにあらず」 引用:マタイによる福音書 第4章4節
「人は考える葦である」 引用:ブレーズ・パスカル
我々が日々、読書やスポーツ、音楽、映画鑑賞。。アニメ鑑賞など娯楽で楽しめるのは「飢えていないから」である。
人の本質は他の動物と同じく、「飢え」たら争い、椅子を奪い合い殺し合うだろう。これは自然の摂理なので仕方のないことである。
だからこそ、日常や平和は大切であり、それがとても壊れやすく危ういことを知っている人間こそが「本物」であると確信する。
谷口悟朗監督は、「コードギアス」や「プラネテス」、あるいはデビュー作の「無限のリヴァイアス」の頃から、人間の欲望(暴力や性欲、嫉妬など)をきちんと描き人間の持つ「弱さ」を否定しない。むしろ、そういうものだと言い続けている。
演出家としての力量は本作を見てもわかる通り、すでに円熟している。
深い世界観と濃い人間ドラマ、「善」と「悪」の対立を描きながらもどちらに転ぶこともない正真正銘の「人間賛歌」である。
もし、僕が三浦建太郎氏の「ベルセルク」を読んでいなかったら、ダークファンタジーとしてもドラマとしても満点をあげられるのだが、前者をすでに15年も前に読んでしまっているので、少し今更感というか。。。古さを感じてしまう。
とても良い作品なのだが、知名度がないのは少しパンチ力に欠けてしまっているのと原作のゴスロリの雰囲気があまり好きでないのが個人的な見解だが。。。昨今観たTVアニメの中では一番感慨深く奥行のあるドラマだった。並の演出家では同レベルのアニメは作れないだろう。
谷口悟朗監督作品はすべからく観ているので次回作も期待したい。
追記:本作の主人公マリアは、キリスト教で言うところのイエスの生みの親「マグダラのマリア」というよりは、イングランドとフランスの宗教戦争がモチーフなので1400年代~所謂、「百年戦争」の時代に活躍したフランスの国民的英雄「ジャンヌダルク」でしょう。火刑や魔女狩りなど当時の世相を反映しているのだと思います。