頑張って見る蔵 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
圧倒的クオリティのファンタジー冒険譚
-最終話まで視聴-
主人公の見習い探掘家のリコ、そのリコに発掘されたロボット少年のレグ。
この二人が、それぞれの目的を果たすために世界に残された未解明の深淵、アビスに降りていくファンタジー冒険譚。
息の詰まる深界生物との戦闘や周りのキャラクターたちとのふれあいを通じた少年少女の成長など、ファンタジーの王道ど真ん中を丁寧に描いていて素晴らしい。
リコちゃんとレグの掛け合いも面白い。基本的にはまだまだ幼さの残る二人。特にリコは好奇心が危機意識よりも勝ってしまう危うい性格でそのせいで何度も窮地に陥ってしまう。
中盤はそのあまりの危うさにやきもきしたりイライラしたりして視聴をくじけそうになったこともあった。
アビスの底にお互いルーツを持っていて、そこへたどり着くことに並々ならぬ執着を抱いている二人。
その情熱と勇気が深淵アビスの世界を描く圧倒的な作画と、時には目を顰めたくなるほどの見る側も痛みを伴うような迫真の描写で描かれる。
あらゆる困難を乗り越え幸運を掴み取り、二人は共に奈落の深淵へと突き進んでいく。
本作品のスケール感を圧倒的なものにしているのはケビン・ペンギン氏が手掛ける音楽である。管弦楽を中心とした、劇場映画かとも思ってしまうような高品質な音楽が、この”人類最後の秘境 アビス”の雰囲気を確固たるものにしている。
ぜひ、最後まで、最後まで見てもらいたい。
最終回について。
{netabare}最終回は2話分の時間を使っている長尺のお話である。
ミーティとナナチのエピソードを余すことなく描いていて素晴らしかった。
最終話の前半はナナチの回想から始まる。
二人は黎明卿「ボンボルド」の人体実験の被験体として深界6層の上昇負荷をかけられる。実験装置は、二人同時に上昇した際、片方にすべての上昇負荷かけるものであり、ミーティはその負荷に耐えることができず原型をとどめない現在の姿になってしまう。
ミーティはアビスの呪いを受けどんな衝撃や危害を加えても再生してしまうというおぞましい性質を持つことになる。そして、ボンボルド卿の実験サンプルとしてさらに人体実験を続けられてしまう。
ナナチはそんなミーティを連れ出して、レグやリコに出会うことになる深界4層に隠れ住む。
12話の引きでナナチが「ミーティを殺してくれ」といった理由が余すことなく描かれる。
そこからは、ひたすら今までの伏線が怒涛のように回収されていく。
それらはすべて
「アビスで命を落としたら、魂が星の底に還っていって命を願った者のところへ形を変えて旅に出る」
という、アビスの死生観・信仰のメッセージへとつながっている。
リコちゃんが、昏睡状態で見た夢の話。
リコちゃんのリハビリの様子。そして、圧倒的なプラス思考と適応力のリコちゃんが厳しいリハビリを経て復活する様子が本当に感動する。
エンディングでリコ・レグ・ナナチの3人が伝報船を飛ばしたシーン。
今まで、出会って別れてきた人々や生物たちの脇を通り抜け奇跡的な確率で上層に届くシーンもこの物語のすべての出来事を彷彿とさせて素晴らしかった。
さらに、ボンボルド卿の不敵な発言で終わる引き。
まだまだこの冒険には先があることを示していて続きを期待させてくれる。
原作があるアニメだと、最新刊のところまで無理やり詰め込んで終わらせるといったことがありがちだ。
しかし、本作品は原作のクライマックスであるボンボルド卿との戦いに突入するのではなく、リコとレグの冒険の波乱万丈さと新しい仲間ナナチ加入までにスポットを当てている。与えられた尺を完全に使い切り、十分な、いや最高の濃度で描いている。
{/netabare}
この作品がアニメになってよかった。
原作の熱量を殺してしまうことなく、アニメでしかできない表現を加えて、とてつもない熱量で燃焼させた見事なアニメだったと感じた。
圧倒的クオリティのファンタジー冒険譚。
まだ見ていないキミは見るべきだ!!