頑張って見る蔵 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「通じ合う」とは何か
主人公の石田将也は小学生の頃、恐れ知らずのガキ大将で耳に障がいのある少女・西宮硝子の補聴器を何度も破壊するなど残虐ないじめを加え、やがて耳を負傷させる。その出来事がきっかけで今度は、主人公が虐められるようになる。やがて彼は人の顔や声を判別することをやめ心を閉ざす。
高校生のある日、彼はとある決心を決め過去に向き合うため彼女に会いに行く。
聴覚障がい者が物語の中心に描かれていることで、激しい批判も受けた本作。
実際は、萌えキャラ化した障がい者とのラブストーリーではない。
コミュニケーション、「通じ合う」とは何かについて正面から向き合った作品だ。
主人公と西宮硝子は劇中で旧来のクラスメートとも再び接するようになる。
登場人物の間では『あの頃』の認識に齟齬があってぶつかり合う。
小学生の頃は上手く「通じ合う」ことができず、やがて拒絶した。
しかし、高校生になった彼らは「通じ合う」ことを衝突を繰り返しながら会得する。
自分の言葉は必ずしも相手に正しくは伝わらない。
相手の言葉は自分が心を開かなければ伝わってこない。
しかし、正しく通じ合えたならとてもうれしいことだ。
本作品はキャラクター、演じる声優、脚本から
「通じ合う」ことの尊さを表現しようという熱量が感じられた。
作画において特に印象的に感じた点は、心を閉ざした主人公の心象風景をアニメーションでの表現を十分に生かして描かれている点だ。
音楽は決して物語の前面に出てくることはないが、物語の心情描写を的確に支えていて素晴らしいものがあった。
単なる娯楽映画ではなく強いメッセージを持った作品だ。