どらむろ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
少年ジャンプ版巨人の星。作風が明るい、トンデモ野球アニメ!
「巨人の星」の梶原一騎原作のトンデモ野球アニメ全46話。
現実離れしたトンデモ魔球アニメですが、主人公・番場蛮(ばんば・ばん)の豪放な性格ゆえか、明るくて観やすいです。
…私の好みとしては、巨人の星より、エンタメ性の高いこっちが好き。
トンデモとはいえ「新巨人の星」程には爆笑要素は少ないです(程度問題だけど)
GYAO!一挙放送で少しだけ観るかー、と思ったら、面白過ぎてつい通して観てしまった。
{netabare}『物語』
時は昭和45年(1970年)、東京読売ジャイアンツ(巨人軍)V9時代の終焉期、「でかくて威張ってる奴は大嫌い」な土佐男児・番場蛮が、紆余曲折で巨人に入って、ライバルたちと魔球対決していく。
序盤は反骨精神溢れる豪放不敵な無頼漢・番場蛮の破天荒なキャラクターがよく分かる展開、中々巨人に入らぬけれど、この序盤も既に面白い。
巨人スカウト含め、登場人物が大体命懸け(文字通りの意味で)、熱いんですが、不謹慎ながらギャグにも見えるw
巨人2軍に入ってからしばらくは、番場の憎まれっ子な性格でイジワルな先輩たちがギャフンと言わされる展開、普通なら面白くなさそうなんですが、悪意をものともせぬ番場のパワーで明るい感じ。
でも、味方からも足引っ張られる1対17野球はあまり面白くなかった。
2軍時代、川上監督から番場が監督代行に指名される12話が何気に好き。
一介の2軍選手がいきなり1軍の監督!?番場監督率いる巨人が勝ったら川上監督引退!?
番場、何気に名監督の素質ありそう。後半対決した野村監督に負けてないです。
この話含め、序盤から前半は展開が破天荒で先が読めず、王道パターン確立していく後半よりもある意味面白かったです。
悩める八幡先輩との男の友情が熱い名エピソードもグッド。
男と男の友情は美しい!
…トンデモ魔球でインフレしていく後半よりも、前半はまだテクニカルな野球の駆け引きあるのも面白かった。
「ノーコン改良機」とか、既にトンデモの片鱗見せてますけど…。
以降は女房役の八幡先輩(超いい人!)と二人三脚で地獄の特訓したり、魔球開発→ライバル破る→ライバル対抗して必殺打法開発→魔球敗れる→新魔球特訓→リベンジ→新ライバル登場以後繰り返し
後半(ハイジャンプ魔球登場の21話以降)の展開は良くも悪くもワンパターンなんですが、非常にテンポが良い。
新魔球(ライバルは新打法)のアイデア閃くきっかけとか、ご都合主義連発、でもそこが良い。
少年ジャンプの王道お約束に忠実、修行パートも(トンデモ過ぎて真面目にやっているギャグに見えて)飽きさせないです。
「ハイジャンプ魔球」やら「回転魔球」「分身魔球」等々、こんなのアリか!?
と驚くトンデモの連発。後の「テニスの王子様」は既に70年代に前例が…
魔球もさることながら、特訓シーンが凄まじい。文字通りの意味で命掛け、普通死にます…。
魔球や打法のトンデモ理論も、理屈は分からんがとにかくすごい野球だ!
ほんと良い意味で少年ジャンプらしい。破天荒さと、良い意味でのパターン確立が。
…1回破られただけでその魔球投げられなくなるのがフシギでした。
プロ野球なんだから、多少打たれてもトータルの防御率良ければ良いような?
そこはまぁ、聖闘士に同じ技は二度通用しない!これはもはや常識!
的な少年漫画のノリなんてしょう。
実在スター選手の中でオリジナルキャラが無双する構図、一歩間違えればダメなのですが、魔球活躍させつつ実在選手の見せ場もあってバランス良し。
…でも、もう少しは実在選手の強さ見せるシーン欲しかったかも。
原作の実在選手の見せ場がアニメではやや削られてた感。
後の「新巨人の星」での掛布さん(スクリュースピンスライディングを猛虎魂で破った)みたいな派手な見せ場は無かったのは残念。
終盤は巨人の実在スター選手(長島茂雄さん、王貞治さん)の偉大さを持ち上げる展開多く、流石に読売ジャイアンツと独占契約結び、よみうりテレビ制作の巨人宣伝番組っぽさが目に付く。
…とはいえ。王さん長嶋さんが偉大なのは確かですし、漢気侍魂に溢れた話多いので、素直にカッコイイです。
2軍時代の味方から足引っ張られる対比で、1軍の王さん長嶋さんら偉大な先輩たちとベストチームメイトっぷりの清々しさが光る。
南海ホークスの監督兼4番打者の野村克也監督のささやき戦術恐ろしい、でも番場も前半にやってたような。
終盤の大リーガー・ロジー・ジャックスとの対決も、かつてのライバルたちが駆け付けてくれるまさに少年ジャンプ!
ハッピーエンドは原作良改変だと思う。侍魂といっても死んだらいかんと思うので。
総じて、巨人の星が戦前(舞台は戦後でも)の気風色濃いのに対し、本作は戦後高度成長期らしい明るい活力が魅力でした。
暗い悲壮さよりも、青春を燃やす純粋な情熱としてのド根性がある。
良い意味で少年ジャンプらしい痛快さとテンポの良さ、全46話殆ど飽きさせない。
70年代の作品ですが、80年代90年代から現在に至るまでの「少年ジャンプらしさ」が既に完成されている感じでした。
余談
マガジンとジャンプ、誌風というか傾向が全然違う。
私の好みはどちらかというと少年ジャンプ寄り、キン肉マンとかキャプテン翼とか、トンデモ路線の方が楽しいです。
細かい理屈はいいんだよ!理屈は分からんがとにかくすごい展開だ!
無論、堅実なマガジンの名作たちも捨て難いです。
『作画』
70年代のアニメ、今観ても特に粗は感じないです。
巨人の星に比べても、割と洗練されていて観易い作画。
魔球や地獄特訓のトンデモ描写の迫力、気迫溢れるキャラクターの表情など伝わってくる。
『声優』
富山敬さんの番場の魅力抜群でした。
納谷六朗さんの八幡先輩も気弱さ含めて好演、川上監督役の西田昭市さんなど、今は亡き実力派の名演技が光る。
モブやゲスト陣も豪華です。
『音楽』
前半OP「侍ジャイアンツ」が一番好きです。歌詞とテーマが分かり易くて歌い易いので。
後半は些か巨人賛歌が過ぎて、好きではないです。
『キャラ』
憎まれっ子世にはばかる。主人公・番場蛮の破天荒さとナマイキさは評価割れそうですが、大好きな主人公です。
ド根性一転張りだけでなく、楽天的な性格も、親しみ易かった。
土佐の狂犬、むやみに敵を作り、自らを不利な状況に追い込んで、それでもガハハと笑い飛ばして勝ちまくる!
前半の、巨人の腹破り宣言で暴れまくってた頃の方が面白い、終盤は巨人の偉大さに感化されて優等生になってしまったのはやや残念。
稀代の問題児番場の女房役な苦労人・八幡先輩が聖人でした。
敵だらけな番場の、作中一貫して唯一無二の味方。
気弱だが己を捨てても番場を支える決意!先輩がいなければ番場の大暴れ成り立たないです。
番場蛮と八幡太郎平(たろへい)、少年ジャンプ史上でもベストコンビの一角でしょう!
(キン肉マンとテリーマン、ダイとポップに匹敵)
何気に先輩の修行も壮絶、包丁刺さったボール捕球特訓は、普通死にます…。
単に番場の引き立て役ではなく、自分が番場のおまけと思い悩んだり、ドラマは彼が一番。
ライバル勢は、花形っぽい眉月、左門っぽい大砲、オズマっぽいウルフチーフ等々。
漢気も侍魂も番場に負けてない名ライバルたちであった。
メジャーリーガーのロジー・ジャックスはラスボスに相応しい強さ。
ウルフがインディアンならでは?のトンデモなキャラ付けで一番面白い。
新巨人の星の「スクリュースピンスライディング」ぽい走塁技は、スクリュースピンスライディングよりは自重してるかなぁ(感覚麻痺)
新巨人の星は1977年なので、更にエスカレートしてるのか…
名将・川上哲治監督かっこいいです。
器の大きさがハンパない。
でも2軍選手に1軍監督代行させるこの人も大概トンでも無かった。
長嶋さん王さん金(かね)やんこと金田正一さん等々の実在スターたちが軒並み存在感バツグン。
野村克也さんはどう見ても悪役、これ本人怒らないんだろうか…。
ヒロインの理香は、ルパン三世の不二子ちゃんみたいな感じ、ひっかき回しつつ、男たちの勝負に浸る。
本作の正ヒロインは八幡先輩なので…。
番場母が高潔な肝っ玉母さんでした。
彼女こそ侍の母!{/netabare}