たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
個々の矛盾をどう生き抜くか
「どんなものでも貫き通す矛と、どんなものも絶対に跳ね返す盾が衝突した。どうなると思うか?」
この究極の問いの答えとは何か?
「物語シリーズ」は三部作を通してと言うより、このシリーズ全般に言えることだが、ギャグや下ネタが本当につまらない。完全に滑っているので本当にそこはマイナス要素でしかない。
しかしながら、今回の完結編は非常に見応えのある佳作だった。
特出すべきは脚本であり、非常に文学的な構造を成している良い作品だったと思う。
ある意味、少年漫画で当たり前のようにある「二項対立」を完全に打ち消してくれたのは筆者の秀でた才能だと思う。その点では「大人」な結論を提示した。
作者は少年漫画にありがちな「善と悪」、「勝った。負けた。」といった思想を根本的に否定している。この「社会」というのはそういった「二項対立」に陥りやすい傾向があるが、そもそもそういった考えが「幻想」に過ぎない。
我々は常に傷を負いながらも生きてゆかねばならないし、常に行動し続けなければならない。そういった日常の積み重ねを肯定し、他者を否定し続けないことに本作の意義がある。
この完結編はそういった心の「傷」を受け止めることができるのかという、阿良々木の成長物語でもある。良くできたジュブナイルだった。
さて、先ほどの「究極の問いの答え」とは何か、映画を見た人はわかるだろうか?
「どんなものでも貫き通す矛と、どんなものも絶対に跳ね返す盾が衝突した。どうなると思うか?」
答えは
「お互いに道を譲った。」のである。