とろろ418 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
手本としては優秀
作品としては決して深くはないし、好きかと問われると首を捻る。でも大ヒットしたという部分には大いに納得できる。そんな作品。
また、良くも悪くも手本としてとても優秀だと思うので、良し悪しは別として見ておくべき作品とも言えます。
まず作品として優れている点は演出面ですね。
拘わり抜いたとされる劇中音楽との融合は、まるでジェットコースターに乗っているかのような爽快さや緊張感を齎しています。
さらに特徴的なのは盤外戦術とも言うべき、宣伝演出でしょうか。
前半に当たる部分のイメージを執拗に強調したことにより、物語の転が良く生きてるんですよね。
あと時間の表現方法も流石でしたね。
これは言の葉の庭の時もやっていましたが、ただ○年後と表記するだけじゃなく、登場人物の体感時間とシンクロさせながら、ちゃんとその間も描く。さらには音楽との合わせ技で、文句なしです。
次に残念な面。
個人的に気になったのは、掘り下げの浅さと、要点のズレですかね。
作品のポイントは、{netabare}入れ替わりと彗星による災害。
そして前者は後者を解決するための鍵のひとつです。
であるならば前者は偶然ではなく、必然でなければなりません。
つまり入れ替わりが起こる原因が明確に提示されないとならないのですが、残念ながら本作ではされていません。
酒を呑んで入れ替わるのであれば、その描写(伏線)とそれが原因であるその理由を描写する。それがリアリティと呼ばれるものです。
そして、もうひとつの鍵になるべきは三葉の父親ですよね。
云わば入れ替わりは災害回避のための手段であって、三葉たちを救える直接の要因ではないんですよ。
父親が動かないから皆が亡くなる。つまり父親が動けば人々が救われる。ここが最重要ポイントであり、決して避けて通ってはいけない壁だったはず。なのに本作は避けてしまった。
見知らぬ女の子と入れ替わってしまう→徐々に互いが惹かれていく→会いに行く→実は亡くなっていた→もう一度入れ替われれば助けられるかもしれない→どうすれば入れ替われる?→理由を探り、酒で入れ替わりに成功→しかし、助けられない→なぜ?→数回の入れ替わりを経て、直接の要因が父親にあったことを知る→飲酒現場を目撃され没収→例の場所に一口分だけ残っていることに気付く→ラストチャンス→父親と和解したところで時間切れ→真相を知らないまま記憶を失う→運命的に再会してED
飽くまで一例ですけど、物語としてはこれぐらいやって欲しかったです。
{/netabare}
楽しみたいのであれば深く考えずに見るのが吉。
作品として参考にしたいのであれば、分析しながら見るのが吉。
と言ったところでしょうか。