TOFUrabbit さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
見始めて5秒で、この作品嫌いになるな。と分かった
セリフはほとんどなく、すべて独白
村上春樹初期(の一部の要素)、なによりも文学が好きな少年少女ならば中高生の頃に一度は陥ったであろう、あのただひたすらに透明で切なくてガラスの向こうの淡い虹のような光、(自閉的な)そんな気持ちと詩情だけが、机上にあげられている
あぁ、はいはい、僕にもこんなただひたすらに切ない。それだけを作品に載せてた時期がありました。と言わんばかりの作品だ(褒めてる)
作品の殆どすべての箇所が独白で占められていて、相手に対するアクションが一切ない(キスでさえ主体的な意志ではなく、自然の力によって行われるように見える)様に、この作品の登場人物たちはディスコミットメントを通り過ぎて、完全草食獣で、自慰的でナルシスティックで弱くて傷つくのを恐れていて感傷的で痛ましい(クラスに1人くらい粗野な横暴な男子や女子が居てそれが助けになることだってあったろうに、そういう学校生活の多面性が一切描かれないのはなんでやねん。と思う)
この作品の凄さはすぐに分かる。まず第一にカット割りだ。こんなに美しくて恣意的な風景カットの挿入、下校する男女の足のカット、打ち上げられたロケットの雲によって半島が半分は影になるといった俯瞰の視点、こんなにハンパない能力の高さは未だ見たことないレベルで1つの頂点だといってもいい風景描写の芸術性の高さだ(最近の新海さんの作品の中にこういう要素が少しでもないのは悲しい)
この作品に対して、「なんで本気で女を探さないんだ」というキャラへの批判はたくさんある。けれどもそれを力なく傷つきやすい文学少年の青春時代に求めるのは酷だ
一方で、ラストの主人公(酒浸り、仕事人間で仕事を辞めた、人格に問題がありそう)に対する本質的で的確な批判は1つたりともみたことない
僕も結局、本当に好きな女性を、わざと見過ごしてきた、避けてきた人間だから、本気のクソ野郎に成り下がったらしい元文学少年の彼に対して何とも言えない
せいぜい言えるとすれば、おい、友達作れよ社会人、くらいか。。
それがやっぱり日本人の幼さで、ラストの主人公の姿に批判が集まらないあたりが、このアニメを、これからも誰ひとりとして越えれないだろうな。と思う所以だったりする
僕たち男は、宮﨑駿でも新海誠でも、結局、女性に「強く生きる」ことを押し付ける
このアニメはカット割り、ストーリー、美しさ、それらが群を抜いていて、音楽の使い方も悪くなく、特に暗い話に落ちがちな3話目は、ストーリー構成とカット割りで美しく仕上げた感が強く、素晴らしい強度を持つ作品で
内容にも共感できるし、懐かしい痛い気持ちを刺されるように思い出すし、いい映画体験ができる
それでいて(だからこそ)、あの踏切りを去る理由が欲しい