諸星小太郎 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
大人の繰り返し鑑賞に耐える上質のギャグアニメ
このサイトの上位ランキングの少なくない割合の作品に、
言っては失礼かと思いますが、いわゆる子供騙しのネタが多く含まれています。
もちろんそれ自体を否定するわけではありません。
ラッキースケベや温泉回、水着回などの表現は思春期の男子の心に猛烈に訴えるものがあることでしょう。
しかし、本当に申し訳ない事ながら、
10年単位で測れる昔に、告白やキスや別れや大人の恋や付き合いやプロポーズやお嬢さんを下さいやあれやこれやをとっくに体験済みで
彼氏の話を酒を飲みながらしてくれる女子大生の娘がいるような年齢の者が見ると、
え?だから?まあ人ならそういうの普通にあるよね、
と言うような、今更特に話題にする価値のあるとは思えない、
しなくていいネタに過ぎなかったりします。
その要素がストーリーに強く絡んでいるならともかく、
なくても全く変わりのないものであるなら、
そればかりを繰り返し強調されても興醒めするばかりなのです。
これを一般的には子供騙しと言います。
しかし、本作の見事な点は、
一見子供騙しに見えるような素材を扱いながら、
それが繰り返しの鑑賞に耐えるクオリティを保っていることにあります。
単純に面白いのです。
その面白さは、優れた小説や漫画が備えている、
「人間が描けている」からに他ならないでしょう。
斉木楠雄とそれを取り巻く人々の人間性がしっかりと描けていて、
それぞれの人格や性格、欲望がきちんとオチに続いている。
まことに正統派のギャグアニメだと思います。
そして何が重要かといって主要人物に単に嫌な奴がいません。
これは大切な要素だったりします。
作画は安定しませんが、その分、声優の見事な演技が光ります。
主演の神谷浩史の淡々とした語りがまず見事に面白いですし、
小野大輔にはハアあのイケボがこんな声出せるの?と驚き、
その演技のバカさ加減(褒め言葉)に感嘆しました。プロの技ですね。
十四松と同一人物とは思えません。いやそこは納得すべきか?とても同じ人物が声を当てているとは信じられないです。
一見すると能天気なギャグ作品なのですが、
酸いも甘いも噛み分けたオトナの、リピート鑑賞に耐える、
オールタイムベストに入って良い佳作だと考えます。
このサイトのランクがあまり高くないのは残念ですが、
後年に再評価がなされるような気がします。