空知 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
歌は世につれ
原作未読
「昭和は古くなりにけり」という中高年の視点で鑑賞しました。
場所は長崎県佐世保。
時代は作中のカレンダーから1966年~1968年あたり。
学校の机や椅子の古さ。
レコード店の店先。
学生運動に酔いしれる若者たち。
権力に反抗し、左派であることが知的であると多くの学生が考えていた時代。
そんな運動家に恋する女性。
古くさい設定です。
ただ、この古くさい設定だからこその魅力が本作にはありました。
それは、
{netabare}
1. ジャズとグループサウンズとの対比で戦後日本の価値観の多様化を表現していること
2. 戦後20年ほどという時代背景で、日本人は老いも若きも、まだまだ心に傷を持っていたということ
そして、
3. 誰もがこれからの社会をどの方向に進めばいいのか手探りであったということ
です。
{/netabare}
この作品のテーマは、
人間は時代に翻弄されるけれども、変わらないものがきっとあるんじゃないかという願いです。
我々が生きている今という時代と同じですね。
個々人が「見ている」「感じている」方向がバラバラ。
そういう意味では、僕たちが立っている今という時代も同じように深刻だと感じることがあります。
「歌は世につれ」
今の時代を顧みると、誰もが共感できる歌がなくなったと感じます。
大晦日に紅白歌合戦を家族一緒に楽しんで、同じ歌に感動できたなんて時代はとっくに終わっています。
そういえば、こんな歌がありました。
「歌は世につれ、僕は思う、燃え尽きそうな若さにしがみついてる」
そう、今の日本は、20年前から完全に変わっているのに、変わっていることを認めず、脱皮しようとしてないんじゃないかと思います。
僕自身の個人的経験をもっと書けたなら、もう幾ばくかの説得力があるでしょうが、それだけの勇気はありません。
あーー、ちょっと逸れました(笑)
良作です。とても良かったです。
ジャズのセッションを通じた男同士の友情の描きかたはとても素晴らしかったです。
リッちゃん素朴で可愛かったなあ。
九州弁で「よかと?」なんて言われたら、おっちゃんイチコロ。
ああ、すみません、また脱線しました。
{netabare}
いきなり8年も時代が飛んでしまうのはあまりにも唐突すぎです。
原作はきっと素晴らしいんでしょうが、この端折りかたは残念でした。
8年の間、ボンとリッちゃんの間に何があったのかも分からないので、このいきなり感は残念の一言に尽きます。
現実的といえば現実的ですが、双方とも恋愛感情は失っているということなんでしょうかね。
{/netabare}