「君の名は。(アニメ映画)」

総合得点
91.2
感想・評価
2514
棚に入れた
11510
ランキング
39
★★★★★ 4.1 (2514)
物語
4.1
作画
4.5
声優
3.9
音楽
4.2
キャラ
4.0

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ネタバレ

ムッツリーニ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 2.0 作画 : 5.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

タイトルなし

ブームも既に過ぎた感じですが、レンタルが開始されたので視聴。
まぁ、先に結論を言ってしまうと、「デートで見に行くにはちょうど良い温度の作品」なんじゃないですかね。
ただ、世間で言われるほど絶賛されるような作品ではないかなと。
この作品がヒットした要因としては、まず監督のネームバリューとは別にPVの良さと宣伝でしょうね。
思わず引き込まれる美麗なPVの出来もさることながら、更にそれを毎日電車で流されてればそりゃ気になります。私も最初は面白そうだと思いましたし。
まぁその後信者とアンチの熾烈な罵り合いを見て一気に冷めたわけですが。

{netabare}さて、物語としての感想ですが、正直「はぁ、そうですか」という感じ。
というのもこの作品、最初にオチから入るという不思議な構成で始まっていて、中盤最大に盛り上がるであろう、「ヒロインが既に死んでいた」という展開に対して最悪のネタばらしをしているので、本来はこれから感動を溜めていくはずの展開が全て予定調和に感じられる。
新海監督はこの作品で観客をどうしたいの? 感動させたいの? 養分にしたいの?

まぁそれはそれとして、後は設定の拙さというか、描写の甘さが凄く目立ちますね。
前半はヒロインサイドを中心として隕石湖を中心とした田舎町の情景が描き出され、流星群の日に2度目の隕石災害に見舞われることが後から解ります。
ただこの隕石の描写がね、凄く軽いと言うか。
もうすぐ隕石が落ちてくるというシーンで何度も隕石が写るんですけど、
「明らかに通り過ぎてるよね、これ?」
とツッコまずにはいられない。
解ってて描いてるのか知らずに描いてるのか知りませんが、落ちてくる感じが全くしないので緊迫感に欠ける。
というか、2013年のチェリャビンスク隕石の映像とか見てないんですかね?
あれ見てたらとてもじゃないけどあんな描写にならないと思うんですが。

次に主人公とヒロインの関係の主軸となる入れ替わりについて。
先祖代々から続く神社を守るヒロインの家の女性には、ある一定の時期に他人と入れ替わる現象が起きるらしい。
これはいいです。
でも、入れ替わり先の主人公とヒロインが恋に落ちるっていうのは、心情的に成立しうるのかどうか疑問に思わざるを得ない。
互いの生きる環境、互いの人生を知るという点においては納得できますが、それとは別に主人公とヒロインには今の環境に対して感じている思いがあり、それについては本人に入れ替わっている以上知りようがない(想像するしかない)わけで。そう考えると、互いが互いの人生に対する侵略者という感情は抱けても、そこから恋愛に結び付くというのは無理があるような。
それでも結び付いちゃったものは仕方ないとしても、互いが互いに無い物を持っていて惹かれあう。それって恋というより憧れに近いものだよね、と。

次に時折出てくるオカルト的な描写について。
ヒロインの実家は神社なわけですから、それ自体が登場するのは別におかしなことではないし、伝統工芸である組紐は因果や縁の象徴としてのアイテムですから意味はあっても特に気にする事もないと思いますが、問題は口噛み酒の方ですかね。
自身の体の一部(涎)を移し、ご神体に奉納するという儀式はまぁ信仰上の問題だから良いとして、物語の終盤で主人公がヒロインの口噛み酒を飲むという発想に至るのがどうにも解せない。
いや、他人の肉体の一部を取り込むことでその者の力を得ようという、儀式的食人を模した場面であるのは解りますし、「これはヒロインの半身である」という描写もされていたのでそれは良いんですが、
なんで飲もうと思ったし。
多分主人公は口噛み酒を飲む事でヒロインの力(入れ替わりの力)が得られるかもしれないと考えたのでしょうけど、普通はJKの涎入り酒(3年熟成)を飲んで超常の力が手に入るとか思わないからねjk
これはもしや主人公が実は隠れオカルトマニアで、今は亡きヒロインの涎を飲む事で「ズットイッショダネ」をやろうとした真の変態である可能性が?

次は時系列について。
物語の中盤でヒロインが住む町で祭りが行われた日を境に入れ替わりが無くなり、おっぱいが揉めなくなって悶々としていた主人公はどうにかヒロインと連絡を取ろうと思い立ち、その道中のなんやかんやでヒロインが住んでいた町が隕石落下事故で3年前に消滅していた事を知るんですが、
何で知らねーんだよ!
隕石が落ちて町が消滅とか歴史に残る大災害でしょ。
あぁでも、2011年の津波で消えた町とか存在は知ってても名前は出てこないのと同じで、つまりはそういうもの……なのか?
いやいや、町一つが消えたって事はその町の名前や映像も散々流れただろうし、そも隕石湖を囲む町とか特徴的過ぎて印象に残らない方がおかしいでしょ。
どんだけなんとなく生きてんだこの主人公……

最後に、「君の名は。」なんてタイトル付いてますけど、これって入れ替わりが無くなった後に互いの記憶が消えていって、互いに大切な人がいたという思いだけが残ったからこのタイトルなんですけど、物語的には正直不要というか、忘れる事に何の意味があるのか解らないんですよね。
主人公が口噛み酒を飲んで再度入れ替わった後、互いの名前を忘れないように手のひらに名前を書くシーンがあり、そこで主人公は名前では無く「すきだ」という思いを残すという……え? 君、好田君じゃないよね? というツッコミと共に、「忘れる」というワードに対してこれがやりたかっただけちゃうんかというね…
物語的には明らかに邪魔な要素だし、別に覚えてても感動の再開に水を差す事にはならないと思いますがどうでしょ。{/netabare}

というわけでこの作品、真面目に見て論評するだけ損です。
綺麗な絵とBGMを眺めて途中になんか壮大な事が起きて最後によかったねーパチパチするだけの、極めて無難な(対応を要求される)ラブコメです。
誰かと一緒に観た場合は感想とか言わずに「よかったねー」で済ませるのが良いでしょう。

……というか、真面目に見て感想を言い合いたい人は同時期に上映されていた「シン・ゴジラ」とか「この世界の片隅に」を観た方がいいです。

投稿 : 2017/08/04
閲覧 : 201
サンキュー:

8

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