蒼い✨️ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
海の青は、どこまでも広がっている。
アニメーション制作:J.C.STAFF
2016年7月8日 - 9月23日に放映された全12話+OVA1話のTVアニメ。
原作は、天野こずえによる『月刊コミックブレイド』にて連載中の漫画作品。
総監督・佐藤順一。監督・カサヰケンイチ。
【概要/あらすじ】
大木双葉は、この春に東京から伊豆(静岡県の東端部)に引っ越してきた高校の新入生。
中学時代の大好きな親友の二人と離れ離れになって寂しくて、
三人一緒だった親友との楽しかった大切な思い出に耽って前を見ようとしない双葉。
訪れた海岸で一人佇む双葉は海の広さと美しさに感動し、
そして、そこに居合わせた海の家の老婆の言葉で双葉の心が軽くなる。
そして、静岡県立夢ヶ丘高校への入学の日。
引っ込み思案で前向きになれない双葉の前に、運命の出会い?が。
小日向光。新入生。ちっちゃくて元気。『うぴょうぴょ』言うのが口癖で、
首に下げているホイッスルを、けたたましく吹く変わり者。
ポジティブ思考で自分の世界で生きている光は海の家の老婆の孫娘であり、
海が大好きでスキューバダイビングのアマチュアインストラクターである。
新しい学校。見知らぬ土地。二人の少女の出会い。生まれる友情。
変な猫。彼女たちを見守る女の先生。
二人の足はダイビング部の部室へと向かい、部活に入って一緒に海に潜ろう!という流れに。
光や部の皆と付き合っていくうちに双葉はダイビングの魅力を知っていく。
今作では、部の皆と一緒に海に潜ることが出来る日を願って、
双葉がCカード(ダイビングライセンス)を取得するまでの日々が描かれている。
部活モノではあるが、彼女たちのゆったりとした日常にこそ、
物語の主眼が置かれているのかも知れない。
【感想】
原作漫画は、アニメ化された4巻まで読みました。
原作・天野こずえで総監督・佐藤順一ということで、
『ARIA』的なものが期待されたに違いない当作品。
今時のアニメのテンプレなら1話目『出会い→入部』2話目『特訓→合格』で済ませて、
速攻で海に潜りまくって海洋アニメとしてセールスしまくるところを、
『あまんちゅ!』では、ライセンス取得まで態々1クールを費やすのが如何にもこのコンビらしいというところかも。
“目的地まで最短距離で真っ直ぐ走る”よりも“そこまでの過程を楽しめ”と言わんばかり、
寄り道しまくりな構成の在り方こそが、作品のテーマ性を体現しているかもですね。
『楽しいは最強』『楽しい世界が無限に広がっている』
この作品に登場する大人たちが、うら若き未成年に贈る言葉。
淀んだ気持ちの人生をポジティブに塗り替えるための心の持ち方を作品で示してくれるのは宜しいのですが、
楽しく生きるためには、“衣食足りて礼節を知る”物質的にある程度満ち足りて初めて心に余裕が生まれる。
それには扶養されていなければ金銭が必要。安定した収入を得るためには、学問を修めて進路へ役立てる。
頑張って生きてるという当人の下地が無いと、『楽しめ』だけでは、ただの逃避行動なのですよね。
言いたいことは、『良い意味でバカになれ!』ってことなのでしょうけど。
作者的には、頑張ってる人へのエールなのかもしれない、そうであって欲しいと私は思ったりして。
頑張って疲れた人がホッと心に一息つけたいときに観て、楽しくなれれば良いかもしれないですね。
明るく楽しく生きるためにも、出来ないことや楽しくないことも何とかして、
人に頭を下げたりしなくちゃいけないのも多々あって、より良く生きるための努力と投資。自分との戦い。
『ARIA』は完全にSFファンタジーな世界なので、ふわっとした夢ワクワクな素敵ワードが作品にマッチしてたのですが、
『あまんちゅ!』は現代日本が舞台ですので、言葉をそのまま受け入れるのはちょっと危ないかも。
くすぐったいほど耳障りが良いですので、尚更ですね。
『勉強して試験でいい成績とるよりも、友達と一緒にバカやってる時間のほうが生徒たちには大事じゃないんですか?』
ドラマ化&アニメ化された某不良教師漫画の主人公が、そういう意味で使っていた台詞を思い出します。
真斗ちゃん先生の教育方針があっちほどダイレクトではないものの、
某不良教師漫画の主人公の無責任極まる戯言を連想させます。
今を充実させたい、充実した未来の為に今を頑張りたい、結果として何が残るかは自己責任。
あとになって後悔の山を築いても覆水盆に返らず。
一度きりの人生の道のりはそれまでの生き方で影響されるのですから、
人に言われてどうこうする軽々しい話でもないと思うのですよね。
なのでやはり作中の教育関係の台詞は受け止めるにしても、そのまま真に受けるよりも、
生き方は光の当て方次第で見方が変わる!といった程度に考えておくといいかもですね。
さて、作品自体は楽しめたのですが、『ARIA』のヒロインとその親友である灯里と藍華にそっくりで声優まで同じという、
双葉の東京にいる二人の親友・茜と千鶴。彼女らがストーリーに絡んだときが自分の中で一番盛り上がり、
一番感動しましたので、『あ、これはイカン!』と思ったり。
弟の顔面や背中に理不尽にドロップキックをかます理不尽な姉(あね)さんと、
反撃どころか抵抗も回避もしない為されるがままのヘアピン弟くん。
ダイビング部の一学年上の双子の暴力姉・空気弟の両先輩のキャラ付けがいまいちで魅力を感じられず、
私にとってのこの作品のマイナス要因である双子の代わりに二人が入ってきて、
光、双葉、茜、千鶴の女の子四人組アニメになっていたら、
『ARIA』みたいに毎回絶賛して感動してるんだろうな、と思う自分がちょっとイヤだと思ったり。
そのようになっていましたら物語とキャラの評価を5にしていたに違いないというのが私の本音ですが。
結局は求めていたのが『ARIA』的なものであって、『あまんちゅ!』という作品単体で楽しめていなかった?という疑念。
前作の『ARIA』が良かっただけに、仕方がないのでしょうかねえ。
作品の構成上で海に潜るシーンが少なく、待ちに待ったダイビングシーンが感動的。
クセがあるもののシナリオが爽やかで感動的。
非常に私好みの作品であることには違いないのですが、
私自身が前作に引きずられすぎたために精神的なモヤモヤが残ってしまう作品であるというのが、偽らざるところでした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。