ostrich さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:----
誰のために跳ぶのか
映画館でリアルタイム鑑賞以来、DVDで10年ぶりに観た。
大林宣彦の実写版も一緒にレンタルし、二本を連続鑑賞したのだが、なかなか面白い体験だった。
本作が大林版をリスペクトしつつ、それゆえに全く逆の方向性を目指したことがよくわかった。
もちろん、原作が同じなので、どちらも青春ラブストーリーではあるのだが、大林版は閉鎖的で不健康であるのに対し、本作は開放的で健全な作風だ。
(誤解のないように言っておくが、この大林版に対する感想はdisではない。大林版はある種の人を捕らえて離さない強烈な作品だと思う)
私が本作を健全と感じた理由はいくつかあるのだけど、やはり何より主人公真琴の成長物語だったことだろう。
物語序盤の真琴は、元気でかわいく、悪いやつではまったくないのだが、なんだかんだで未成熟なガキだ。
一方、男子2人は結構、大人なのだが、その違いが何かと言えば、「他者のことを考えられるか否か」に尽きる。
真琴についてはタイムリープを使うのは、ほぼ自分のためであることからわかるし、男子2人は真琴や告白してきた女子に対する態度でわかる。
そんな真琴が最終的には他者のためにタイムリープを使う。他者のために跳ぶ。ここが泣ける。
しかも、最後のタイムリープの結果、真琴はある喪失を経験することになるのだが、そのことを真琴はあらかじめ覚悟してもいるのだ。
こういう「人生を変えた夏」を描いた作品は多々あるし、それ自体が目新しいわけではないが、これを「時かけ」でやるセンスが素晴らしい。
作り手たちは「時かけ」という物語を跳躍させたのだ。