「君の名は。(アニメ映画)」

総合得点
91.2
感想・評価
2514
棚に入れた
11511
ランキング
39
★★★★★ 4.1 (2514)
物語
4.1
作画
4.5
声優
3.9
音楽
4.2
キャラ
4.0

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ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

幸せな結末

うーむ。
大瀧詠一を連想するところが、我ながらオッサン臭い。

現実の風景を「背景」として変貌させるビジュアル表現は、アニメ独特のもので、これが無ければ、宇宙空間から地方都市まで連続して統一感をもって表現しきれなかっただろう。


{netabare}幸せな結末=ハッピーエンディングを迎えるラブストーリーは、恋愛の本質が「運命」のように自分ではコントロールできない、自身の外部から「到来」するものであると語り掛けているようだ。

恋人を「作る」作為が、「到来する」恋愛の超越性からはほど遠い様に、「幸せ」もまた努力して掴むものではなく、外部から到来するものだ。
努力して恋人を「作る」ことが出来たり、目標を実現したときに喚起されるのは「満足」であって「幸せ」ではない。

物語においては、目標を定め、「努力」するストーリーの方が作りやすい。
視聴者の感情的にも、目標=努力=達成といったPDACサイクルじみた作劇の方が、現実的である分、なじみ易いだろう。

本作においても、終盤で町民を避難させようと右往左往する描写で、努力=達成のドラマツルギーをなぞっているように見せかけている。

が、そもそもの主人公たちの「出会い」と恋愛に関しては、一方的に進行する、超越的な力によって「到来」するものとして現れてくる。
ラブストーリーとして全体を見渡せば、全ては、神秘的な「運命」が主人公たちの「外部」から、自分たちの作為とは無関係にやってくるものとして描写されている。


別作品のレビューでも記したが、恋愛が深い歓びをもたらすのは、一方的に「外部」から到来して自身を捕らえつくす超越的な戦慄を体験させるからだ。
「幸せ」もまた、自身の努力という作為と無関係に、一方的に与えられるからこそ、敬虔な多幸感を生じさせる。

それら超越的な経験は、自意識に駆動される個人が、どのように意思的に行動しようとも手に入らないものだ。
意思的に「避難」を成功させる描写と裏腹に、主人公たちの「努力」は、出会いと再会には、実は無関係だ。

作中で頻繁に挿入される「扉が閉まる」映像描写は、自意識の扉の内側に閉じ込められた「個人」をイメージしているようにも受け取れる。
閉じた扉を突破するものは、「努力」ではない。


一方的に外部から到来する「運命」の偶発性を、心を開いて受け止める主人公たちが「幸せ」な「恋愛」の成就を迎えるラストは、製作者が恋愛体験について、よく本質をとらえ得たことを物語っているようだ。

ご都合主義とは一線を画した、「恋愛」ストーリーと言えるだろう。{/netabare}

投稿 : 2017/07/30
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サンキュー:

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