蒼い✨️ さんの感想・評価
3.1
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
クズから始める声優ライフ。
制作:ディオメディア
2016年10月 - 12月に放映された全12話のTVアニメ。
渡航(ラノベ作家)とQP:flapper(イラストレイター・ユニット)
によるメディアミックス作品のアニメ版。
監督は井畑翔太。
【概要/あらすじ】
主人公・烏丸千歳(からすま ちとせ)は、駆け出しの新人声優である。
ちなみにアニメ内では描写が全くないが早稲田大学に籍を置く女子大生であるらしい。
仕事はマネージャーである実兄・悟浄(ごじょう)の頑張りあってモブ役や端役であるが、それなり。
現状に満足していない千歳は、『自分はもっと出来るはず。大きなオファーが無いのは周りが全部悪い』
と、承認欲求が肥大化しまくっているが、プロの声優としての努力も向上心も熱意も皆無。
あるのは、『カワイイ』『スゴイ』とチヤホヤされたい気持ちばかり。
千歳が端役で出演していた作中アニメのイベントが開催されている都内の会場から、このアニメは始まる。
表向きはファンに夢を見せるために華やかだが、舞台裏はグダグダで腐っている虚飾の多いアニメ業界。
千歳は、『わたしが言うのもなんだが、この業界はおかしいと思う』と常々現状に疑問を抱いていた。
そんな千歳も、ラノベ原作アニメ『九龍覇王と千年皇女』のヒロイン役に抜擢される。
『わたしの時代ktkr!!』と喜ぶ千歳であったが、声優としての実力を評価されたわけでもなく、
若さとルックスを商品価値とした、アイドル声優として売る戦略の一環に過ぎなかった。
声優ユニットの結成。共演の女性声優たちとの交友。声優の立場からアニメに関わっての理想と現実の違い。
このアニメは、クズな千歳の他の声優との意識の差や、
一つのアニメを通じてトホホな業界に右往左往していく様を楽しんでいく業界コメディなのかもしれない。
【感想】
渡航の作品に触れるのは初めてであります。
アニメ業界モノといえば『SHIROBAKO』ですが、
『SHIROBAKO』では、多種多様の専門の技術職の人達の仕事が集まって作品を作っている、
と業界の宣伝効果が抜群なものであったのですが、
『ガーリッシュ ナンバー』は、業界の零れ話といった様相もなく、
やってることは、アニメに出てくる5人のヒロインズのメンタルの部分が中心ですので、
単に仕事を絡めた女の子たちのアニメとして観たほうが良いかもですね。
ただ、そのメンタルの部分もアニメ業界に限らず一般論的な悩みが殆どであり、
アニメ業界を扱った意味があったのかな?という疑問も正直な所として拭えなかったり。
そもそも、この作品は渡航がアニメ原作者の立場からアニメ業界に抱いた不満が発露であり、
それは、『プロデューサーは人の話を聞いて調整して真面目に仕事しろ!』といった個人的なものであり、
同人漫画家が巻末あとがきに、他人やアニメへの愚痴を手書きで延々と書きなぐるのと同じレベル。
なので話は広がらず、作中に出てくる被害者ポジのラノベ作家が原作者の分身?
そして、作中のクズPが悪役ではないものの原作者のサンドバックとして狂言回しに徹しただけで、
俯瞰してもスケールが小さいものになってしまった印象。
アニメとして売らなければならないですので、愚痴のオンパレードにも対象を敵役とした告発モノにもなれず、
深刻にならない程度に主義主張を稀釈して、女性声優の萌えとストーリーを注ぎ注ぎ足し足しにしていった感。
なので作品としての太いバックボーンも無く、一話目で『腐った業界』と銘打ったものの、
結局は無難な展開に舵を切ったまま、こうなって欲しい!と終盤になって原作者の理想でラッピングして、
小奇麗にまとめて普通なアニメに収まってしまったなというイメージ。
『しょうもないことだらけの業界だけど、業界一同!頑張ってるので宜しくー!!』みたいな?
主人公の“ちーさま”がチョイ役でしかない、温泉回とかベタなものの実は個人的には楽しめたものの、
“ちーさま”の成長につながる終盤の展開が退屈。“ちーさま”をサポートする新キャラの松岡くん。
本当にこれがつまらないキャラで、中盤に楽しめる話が幾らかあったのが、これで本当に帳消し。
テーマを作ってシリアス方面に振れば振るほどに既視感のある、
ありふれた話になって面白みが薄くなるのはどうなのかな?
これなら、ゲス満載なギャグアニメに徹して業界の人間も『あるある!』『ないわー!』と爆笑できる、
ブラック業界コメディ展開にしたほうが良かったのではないか?
そもそも、このアニメが業界人から無反応だったのは、業界に対して上から目線で、
原作者のイメージだけで世界観が構成されてるからだと思います。
他のアニメ業界アニメと比較しても、綿密な取材や原作者自身の経験の蓄積と含蓄が少ないですので、
あーだこーだと言っても説得力が薄いような?
原作者の独りよがりの部分と、視聴者に阿った部分がブレンドされて、
人を楽しませる作品作りとして練度が徹底的に足りてない。
それが、このアニメに対する結論でした。
10話目以降がもっとマシなら評価が変わっていたのですが、
完走した結果、点数を下げざるを得ませんでした。残念ですね。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。