「京極夏彦 巷説百物語(TVアニメ動画)」

総合得点
62.1
感想・評価
79
棚に入れた
517
ランキング
5063
★★★★☆ 3.4 (79)
物語
3.5
作画
3.3
声優
3.5
音楽
3.3
キャラ
3.4

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

地獄少女を時代劇・必殺仕事人風にした感じの怪奇譚。クセは強いが隠れた良作です。

直木賞作家による時代小説原作の、怪談アニメ全13話です。
江戸時代末期を舞台に、人々の心の闇を、妖怪の仕業に見立てて始末する異形の怪奇譚。
「地獄少女」に2年先立ち放送された先輩作品でしょうか。ホラーよりも、人情路線。
極めて独特の画風が醸すおどろおどろしい雰囲気、悲劇と狂気に塗れた業の闇…
描写的にも精神的にもグロいのも含めアクの強いアニメですが、オンリーワンな魅力あります。

「御行奉為(おんぎょうしたてまつる)」

{netabare}『物語』
時は天保年間(江戸末期)、でもキャラのセリフ等ところどころ現代的だったり、舞台の雰囲気としては「蟲師」っぽい。
大店(おおだな)を若隠居して物書きになった主人公・山岡百介(ももすけ)が、妖怪めいた怪しすぎる三人組の小悪党たちと関わり、彼らの生業である、人々の心の闇を妖怪に見立てて始末する「仕掛け」に巻き込まれていく…
各話、古典的な怪談の元ネタになぞらえたオムニバス。

気弱な一般人の百介が、闇の住人な小悪党たちの世界に踏み込んでしまう危うさ、結構親切な又市さん達の百介への配慮、外連味タップリな会話劇、謎の美女お銀さんとのロマンスも怪奇譚に華を添えたり、やっぱり怖かったり…
ミステリー要素も飽きさせず、でも段々とミステリーか怪奇現象か分からなくなる奇々怪々摩訶不思議。
人と妖怪、百介と小悪党たち、だんだん区別が付かなくなるような雰囲気に呑まれていく…。

独特過ぎる演出により、人間と妖怪の区別が付かない怪奇な雰囲気が特徴でした。
どう見ても人間じゃないキャラ多数、でも実はホラーではなくミステリー・サスペンスであり、妖怪に見えるのは百介の心象風景の象徴的表現であった(多分)。
…これはアニメのみだと分からず、終始、幻想と現実の狭間に置かれている感じの時代劇。
各話のゲストは見た目ちゃんと人間、でも、業の闇に人の道を踏み外したその末路は、妖怪と区別が付かない…
妖怪はいるのかいないのか?は曖昧かつどうでも良く、哀しき人の業こそが妖怪なのだ!
時に歪んだ愛、時に憎悪の妄執、時に人の道を外れた禁忌、精神的にも描写的にも狂った話のオンパレード、グロいけれど、一抹の切なさも多かった。

3話「白蔵主(はくぞうず)」がハラハラ感では一番でした。百介、一歩踏み外せば死ぬ!?
生と死のギリギリ綱渡りで闇の世界のぞき込む、又一さんの優しさが分かる回でした。

随一の傑作回は6話「芝右衛門狸」
芝居という舞台もまた幻想と現実を曖昧にしている、妖怪ホラーと見分けが付かない恐怖の一方で、善意や悪意では測れぬ業の深さ…
子ども妖怪がコワイ!でもかわいそう。
非常にやりきれない悲劇的なお話なんですが、あまりに幻想的過ぎる演出故か、不思議と鬱や悲しみとは違う後味ありました。
これが怪談の凄味なんだろうか…。

終盤、小悪党たちが地獄に落ちる?別れのシーンが圧巻!
ラスボス・京極亭コワイ!(作者本人)
百介と小悪党たちの友情めいた人情と、お銀さんとのロマンスも炸裂しつつ、百介は人間の世界に戻っていく…
でも幾多の闇を体験し、これ以上の怪談は中々書けぬであろう…。


総じて
原作の時代小説の雰囲気をアニメならではの表現で解釈した意欲作でした。
とにかく、雰囲気が素晴らしい!これぞアニメというメディアならでは。
妖怪とは人の闇であり、闇に落ちた人の心は妖怪と区別が付かない…
という解釈を一貫して反映させた作風でした。
通して観るドラマ性も、百介と小悪党の関係性でバッチリ。
各話は憎悪回よりも、狂気で人の道外れるタイプの話の方が好きでした。

雰囲気が素晴らしい反面、話が分かり難い回も多いのが難かも。
終始現実と幻想の区別が付かないのは本作独特の良さな一方で、話が分かり難い。
ミステリー・サスペンスとしては説明不足な回が増えてくる。(特に後半)
とはいえ、そこは雰囲気に呑まれて観るのがオツというものでしょうか。


『作画』
一般的なアニメとは異質な画風、時代劇で妖怪が現実に溶け込んでいる独特の作画と演出素晴らしいです。
女性陣もお銀さん、ゲスト含めて妖艶でエロい。
グロシーンも怪奇ホラーの凄味あり。
…怪奇時代小説の雰囲気をアニメで視覚化して見せた、オンリーワン。

『声優』
気弱な主人公の関俊彦さん、不気味にして人情たっぷりの中尾隆聖さん等々、声優陣が抜群でした。
中尾隆聖さん「御行奉為(おんぎょうしたてまつる)」カッコイイ。
お銀の小林沙苗さんの艶のある美声、長耳の若本規夫さんは若本さんらしくかつ迫力あり。
古谷徹さんの狂気に満ちた語り等、ゲストも豪華。
ラスボス・京極亭は作者の京極夏彦先生ご本人、声優やコメンテーターもお手の物な方だけに、非常にハマってました。

『音楽』
主題歌は洋楽でちょっとイメージに合わない。
実は雰囲気に合っているかも知れないけれど…。


『キャラ』
物書きの先生こと百介は気弱なお人好し、闇の世界に踏み込んで良く生き残れたとフシギなんですが、そこは彼の人徳含めた強さだったと分かります。
大店の若隠居という事で甘い性格は、現代人の視聴者に感性が近い主人公であった、ヘタレさ含め。

一人称が奴(やつがれ)な詐欺師っぽい男・又一さんの魅力バツグンでした。
一人称やつがれは文豪ストレイドックスの芥川龍之介のイメージだけど、元祖やつがれは又一さんなのだ!
飄々と油断のならぬ男、でも密かにカタギの先生を闇から遠ざけようとする人情がステキ。
キメ台詞「御行奉為(おんぎょうしたてまつる)」は閻魔あいちゃんの「いっぺん死んでみる?」ばりに震える!

お銀さんの怪しい美しさハンパ無かった。こりゃあ危険な香りしても惹かれるの分かります。

長耳も実は優しい男、彼の背負った業は主要キャラで一番切なかった。

ラスボス・京極亭はいったい何者なんだ…
アニメを1クールで締める、闇から現実に区切り付ける為のラスボスなんでしょう。
京極先生強かった…。{/netabare}

投稿 : 2017/09/13
閲覧 : 577
サンキュー:

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