たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
SFとしてはハリウッド並みに頑張ってはいる
日本人では初めて、アメリカのSF文学賞「フィリップKディック賞」を受賞している享年34歳で亡くなった小説家伊藤計劃のデビュー作であり、「死者の帝国」「ハーモニー」次ぐ、アニメ化第三弾「虐殺器官」
原作の小説は未読で、元来SFが好きなので「死者の帝国」「ハーモニー」は劇場で視聴済み。
で、今回で伊藤計劃作品最終作な訳ですが、アニメ元請け制作会社が倒産し企画が倒れかけていたにしては非常に良質なアニメーションで、演出も作画も撮影も上手い。特に3Dの使い方は最近のSFアニメやロボットアニメを凌駕するぐらい自然に違和感なく使われていて手練ているのが直ぐにわかったし、攻殻機動隊ARISE以来の電脳空間も理解しやすく、設定やデザインに抜かりがないのには驚いた。
以前に見た「ハーモニー」のグダグダがまるで嘘の様に感じたのが正直な感想だ。値段以上のものは観れた。
脚本の方だが、全体を通して見終わったときの感想は。。
「。。。。これって黒沢清の「CURE」に似てね?」
だった。
1997年に黒沢清監督が役所広司主演、萩原聖人助演で撮ったサイコスリラー「CURE」に非常にプロットが似ている。というか、SF要素を抜けばほぼ同じである。
黒幕が言語でまるで催眠をかけたように人を操ったり、猟奇的になったり、現代の社会問題に悩んだりするところがそっくりである。(笑)
しかし、社会問題の定義に関しては、2017年現在、アメリカ合衆国で行われているドローン技術や対テロ活動、戦前のような内向きの世界経済状況、まるでナチスドイツのようなトランプ政権などを見ていると、一切笑えないから困る。現実がフィクションの世界を越えようと動き出しているからだ。
そう考えてこの映画を見ると、非常にタイムリーな作品であるし、現実を直視できるという意味では、「今」見るべき映画のひとつと言えよう。
三作品の中ではダントツでSFとしても映画としても極めて上質だ。
亡くなられた作者も、このレベルでアニメ化すれば納得できるだろう。
ただ、内容を理解するには「攻殻機動隊」並みに予備知識が必要なので、間違っても恋人と一緒に行ってはいけない。(笑)
あと、説明ゼリフや静かな演出で眠気に誘われる場合もあるので、睡眠を充分に取ってから観ることをおすすめする。まるで押井映画のように脳をフル活用するからだ。
声優に関してはあまり触れないでおこう。可もなく不可もなくといったところだ。