鸐 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
凄いことをしてる
私の人生で1番か2番目に劇場に行って視聴した映画。
作品の盛り上がりは規定値を大きく超えないけど記憶に深く刻み込まれる映画になっている。
30周年を迎えようとしている野原一家は様々な困難を潜り抜け、概念として、凄いことをする一家になってきているけど、本質は破天荒なちょっと面白い一家である。この作品では、その本質をちゃんと理解して作られている感じがする。
逆にクレヨンしんちゃんの映画を見続けているとこの描き方は地味にさえ思えるのだが、このように描いたことで、対比的にケンとチャコの目論見を打ち砕いたことが本当にすごく見えた。
ケンとチャコが懐かしい匂いを全国に拡散することを諦めた理由は詳しく描かれていないのだが、カスカベ防衛隊を追うときはあんなにも熱くなっていたケンが最後に大きく落胆も焦る様子も見せずに身投げして終わろうとしたことについて、描かれていない部分で気持ちが変わる出来事があったはず。
はじめは、しんのすけとヒロシが再開してからケンが現れ「見させてもらったよ」と言うまでの間。
つぎに、昭和荘のテレビで間接的に野原一家の奮闘を見たとき。
さらに、エレベータから野原家の様子を見たとき。
そして、足にまとわりついたしんのすけの感触。
描かれていないからこそ、ケンはただの敵キャラじゃない奥ゆかしさを生み出していると思った。
前半の見せ場は夕日町銀座商店街の一幕。風景の美しさと人々の賑わいをノスタルジックな音楽で絶妙な雰囲気に仕立てている。
後半の見せ場は、やはり東京タワーの階段を駆け上がるしんのすけの有名なカット。
よく動くカメラに追いつかないしんのすけが何度こけて走り出すんだ。最後の方なんて線のタッチ変えてきてるし。どうしたらこんな絵が作り出せるんだ。意味わからん。
この映画はもう何度も見ているけど、見るたびに違う印象を受ける。
今回の印象は記憶よりも地味に感じたけど、理解できない凄みがあるなと思った。
勉強になる。(でも楽しんじゃう)