どらむろ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
陰謀劇なのに絶妙な清々しさと優しい世界。雰囲気、娯楽性、完成度の高い良作。
「さらい屋五葉」のオノ・ナツメ作品、全12話。
ひとつの国に13の自治区があり、全く異なる文化がある舞台背景で、主人公の青年が、各区を視察する最中に、次第に陰謀に巻き込まれていく…
前半は地味な雰囲気アニメな感じですが、最終的に脚本の完成度は高いです。
スタイリッシュで上品、練られた交流劇と陰謀劇、適度なシリアスありつつも、全般的に優しい世界なのが魅力。
序盤の雰囲気を気に入るか否かで評価分かれそうですが、非常に良質なアニメです。
一口食べただけで柔らかく、しかも噛めば噛む程美味しさが増す、上質なパンの如し。
シリアスも、抹茶ケーキの抹茶の如く、美味しさに貢献している感じ。
{netabare}『物語』
舞台となる「ドーワー王国」は13の独立自治区から構成され、「ACCA(アッカ)」という独立行政組織(実質この国の行政を仕切る?)が力を持ち、主人公のジーンはそのアッカの監察官として、各区を旅して業務の監視や報告を行う…
寡黙な青年で何考えてるのか読めないジーンが、ひょんな事から?陰謀派と反陰謀派双方がマーク、ジーンは知らないうちに陰謀の渦中に…
ジーンは寡黙で無欲な青年…と思いきや、実はキレ者…本作はかなり俺強い系でもあり…
前半はアッカや13区体制の特殊性を、表向きはスイーツ食べ歩き雰囲気アニメで淡々と進めつつ、後々のキーパーソンたちの思惑や関係性、陰謀の構図を丁寧に描いていく。
序盤の地味なオシャレ雰囲気から、ジリジリと不穏な気配が高まりつつ、中盤にジーンの背負う背景が明かされ、ドラマが加速していく。
旅行記っぽい趣きあり。
ひとつの国なのに、全く別々の国を旅行している感じ。
文化、特に食文化、特にお菓子スイーツ文化紀行っぽく、旅行物としての雰囲気が楽しいです。
ここら辺に面白味感じられるならば、中盤待たずにそこそこ楽しめます。
食文化の違いは、各キャラの個性(妹のロッタちゃん萌え)印象付けるだけでなく、食文化を通して結ばれた関係が後々意外な形で物語を動かす辺り、文化と人の交流の面白味を感じさせてくれる。
振り返ると、序盤のスイーツも実は無駄では無かった。
全般的に陰気になり過ぎない、コミカルさも本作の持ち味。
陰謀派のバカ王子がアホの子で微笑ましかったり、シリアスに謀(はかりごと)巡らす各陣営の上層部の思惑すらもジーンが華麗にドンデン返しして見せたり、ロッタちゃん初め陰謀に関わらないキャラ達の交流(食パン同盟)が優しい世界だったり。
これらが故か、陰謀劇が重いハズなのに、終始作風が明るい。
ここら辺の雰囲気は、かなり絶妙でした。
中盤にジーンの出自や立ち位置が判明して以降、ラストまでノンストップの面白さでした。
友人ニーノの過去の秘密やジーン・ロッタ兄妹への想いなど、ジーン中心に回る各キャラの関係を丁寧に描きつつ、過去の事件や陰謀と、現在進行形の正体が掴めなかった事態が、まるでパズルのピースが揃うかのようにはまっていく…
ああ、こういうことだったのか!ああ、このキャラはこう思ってたのか!と。
過去の話もドラマチックで非常に良い上に、その過去を踏まえて、現在の陰謀の渦中にある人物たちも実は優しい世界なんだな、と察せられるのも魅力かも。
終盤に向けての二転三転する水面下の攻防は、ハラハラドキドキ。
最終的にジーンが演出した意外な結末は、(若干のご都合感はあれど)お見事!圧巻でした。
王国の将来と、ジーンたち個々人の人生の両方を勝ち取る完璧な勝利。
総じて極めて完成度が高い上に、絶妙なバランスの上で、作風が優しいです。
ジーンやニーノの背景はかなり重いはず、陰謀ものっぴきならぬはず、その割には終始、痛快さと爽快さがある。
全話通して、陰謀劇も、個々のキャラドラマも、ほぼ理想的な完結を見せてくれた。
…5点満点でも良いんじゃないかと思う位、良作です。
殆ど非の打ちどころが無い。
人によっては序盤退屈なのと、優しい作風の裏返しのご都合感は難かも。
私的に、そこも気にならないです。
『作画』
スタイリッシュなイケメンや美女揃い。
タバコ吸う所作など、細かいことろが凝っている。
キャラデザもさることながら、各区の文化描写や、食が美味しそうなのも魅力。
『声優』
下野紘さんのジーンは派手さは無くとも、序盤から終盤までジーンの魅力引き出していた。
ロッタちゃんを演じる悠木碧さんも非常に良い。これは可愛い妹ボイス。
モーブ部長の田中敦子さんもステキでした。
ニーノの津田健次郎さんも渋い。
バカ王子の宮野真守さんもはまり役。
五長官など各陣営の上層部が豪華、諏訪部順一さんや緑川光さん、遊佐浩二さんなど、深みと曲者感が凄い。
『音楽』
OPはスタイリッシュ。
EDがテーマに即した良曲、後半に行くほどに良さが分かります。
BGMも本作特有の雰囲気を形成。
『キャラ』
飄々として無欲、一見無害な青年だが、実はキレ者…
ジーン・オータスのタダ者ではないっぷりが、後半以降発揮されてくる。
陰謀も、無関係な交流も、全てジーン中心に回る、これぞ主人公!
中盤以降の芯の強さも魅力、華麗に陰謀をひっくり返しつつも、最後まで自分らしく生きる生きざまもスタイリッシュ。
妹のロッタちゃんの可愛さも本作の見所でした。
陰謀の渦中にあって、無垢、無邪気で穢れなき妹ちゃん。
それでいて芯の強い魅力もあり後半更にステキ。
無意識のうちに周囲に良い影響与えている(バカ王子とか)彼女の存在は大きかった。
ニーノが良き友人にしてミステリアスな男、ジーンよりかなり年上だった…25歳で高校生はムリがあったようなw
モーブ本部長やグロッシュラー長官など上層部が軒並み実力派でした。
モーブ本部長、理想的な女性上司だなぁ。
ジーンの上司オウル課長が昼行燈だが実は…など、意外な人物が強かったり。
シュヴァーン王子のアホの子っぷりが、本作の作風コミカルにしている。
ダメ王子だが悪い子ではなかったり、部下のマギーとのやりとりが面白かったり。
そのマギーはロッタと「食パン」通じて交流深める辺りも、シリアス緩和に貢献。
やはりザンネンな男レイルも含め、食パン同盟面白かったです。
この他過去編の王女やニーノ父も含め、各キャラ魅力ありました。{/netabare}