RTF さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
綺麗な退廃
「SF版ごちうさ」とかいう見も蓋もない評があるらしいが、与えられる情報が限られており、かなり考えないとと物語の芯が見えてこないので仕方のないところか。
確かに、途中で挿入される知識の箱の世界を旅するシーンなどは、「萌え」として純粋に楽しめる。
また、作画もクオリティが高く、かわいい女の子が動くというだけで頭を空っぽにすることもできなくはない。
しかし、自分としては(何回か見返す必要はあったものの)ストーリーも楽しむことができたので、一度はSF版ごちうさとしてこれを楽しんだ人も、改めて「ガラスの花と壊す世界」として楽しんでくれるといいなあ。
あと、リモ役の花守ゆみりはすごく上手いなあと思いながら見ていた。まどかマギカで悠木碧の声を聞いたときと似たような感覚を受ける気がする。なんかテンポが違うというか。それがよい。
以下、考察っぽいやつ。
{netabare}
世界をよりよくしようというのは誰もが多少なりとも志すことであると思うが、その「よい世界」とは何なのか。
誰も喧嘩をせず、犯罪もなく、平和に暮らせる世界だろうか。
多くの人はそう考えるのかもしれない。
だが、人間社会は一人ひとりの人間の意志が複雑に絡み合う社会であり、そこで平和を実現することは容易いことではない。
一人の意志を通すことで、他の誰かの意志を押さえつけることは避けられない。
だから人間社会には争いが絶えない。
では、そもそも人間の意志がなければどうだろう。
それなら平和な世界が実現するはずだ。
そうして、地球をよりよくするために作られた Vios という OS およびその上で動くマザーというソフトが、意志をもつ人間を滅ぼす方向に動いたのだと思う。
「ガラスの花」は、現実世界から諸悪の根源たる意思決定を除いて抽出された、「平和な世界」の象徴であろう。
そうして人間は滅び、情報空間上では現実世界のバックアップである知識の箱から意思決定を除いて抽出された平和な世界(ガラスの花畑)が広がる。
アンチウイルスソフトであるデュアルとドロシーは、そんな理想的な世界を持続させるための歯車であると同時に、ウイルスを「自律的に」探索するプログラムでもある。
書くのが面倒になってきたので端折るが、この物語は、意思決定なき平和な「ガラスの花畑」の脆さ(何せガラスなのだから)と、人間なき今、かつて人間がもった「意志」を得て情報空間を生きていくプログラム(デュアルとドロシー)を描いたものなのだと思う。
意思決定がなく平和な世界は確かに平和であるが、果たしてその世界は「よい」世界だと言えるだろうか。
意志を持たずに生きることにどれほどの意味があるだろうか。
そんなメッセージを自分は読み取った。
リモとスミレの血縁関係とか、他にもいろいろややこしいことはあるとか考えていると、また見返したくなってきた。
{/netabare}
あまりメジャーでない作品であるにも関わらず、いくつか詳しい考察がされているところもあるので、普段は物語の全貌がわかりやすく説明されるのを待っている人も、たまには自分で物語を組み立ててみてもいいのではなかろうか。
それはそれでパズルのようで面白いと自分は思う(解釈は人それぞれだというところがパズルとは少し違うけれど)。