Ka-ZZ（★） さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

キャッチコピーは「わたしにとってそれは…まるで月あかり」。

この作品は、オリジナルアニメで監督は岸誠二さんでアニメーション制作がfeel.と知り視聴を決めた作品です。
背伸びをしない普通の恋愛モノ…と聞いていたので視聴を楽しみにしていました。

キャラデザは決して今風ではありませんでしたが、プレスコの採用と合わせてこの作風にはピッタリ合っていたと思います。
作画は総じて綺麗で丁寧に描かれていたので好印象です。

物語の舞台は川越市立第三中学校3年1組…主人公の安曇 小太郎とヒロインの水野 茜が通う教室です。
中学3年生といえば、高校受験、中総体、修学旅行など、たった1年に沢山のイベントが詰め込まれた1年…
その1年をどう過ごすかは個人の力量次第です。

踏み出さなければ何も始まらない…
勇気を振り絞って踏み出したところで、結果が付いてくるかは分からない…
でも踏み出したら見える景色が変わるから…それに伴う結果を受け止めたいから人は一歩を踏み出すんだと思います。

主人公の安曇 小太郎…彼にとっては激動と苦難に満ちた1年だったのではないでしょうか。
川越祭りのお囃子…
小説家を目指して執筆を続けてきた…だけど小説家になんて簡単になれる訳がなくて…
そして高校受験…

努力って簡単には報われない…それは当たり前の事ですが、それでも人は願いに縋ってしまう…
小太郎にとってそんな事を思い知らされた1年だったと思います。

でも彼は進みました…
クラスメイトの水野 茜に恋をして…気持ちをしっかり伝えました。
自分の好きっていう気持ちを言葉に出して伝えるのって、とても勇気のいる事だと思います。
ましてや、相手が自分の事をどう思っているかも分からない…
それでも言わなきゃ何も始まらないから…

ヒロインの水野 茜…主人公もですが、とにかく純真な女の子でした。
陸上部では短距離を専門にしており、鍛錬を積み重ねて結果も残してきた。
もともと成績優秀だった彼女…考えてみると、小太郎とは真逆の1年だったのではないでしょうか。

そして彼女も進んだ…
小太郎の気持ちを受け入れました。
正直彼のどこが良かったのかは分かりません。
けれど、二人一緒に歩んでいくと決めて実践していく…

最初はぎこちなく頼りないかもしれない…
けれど、それは仕方の無いこと…
だって二人で一緒に歩いていくこと自体、二人にとって未知の世界なのだから…
だから、それは時間が解決してくれる…

本当に優しくて…残酷な作品…
勇気を出して言葉を発したのに届かない…
きっとそれまで色んな事をたくさん考えたんだと思います。

中学生の恋愛って…まるで薄氷の上を漂っているみたい…
全てが不完全で不安定で、一つ間違ったらあっという間に全てが壊れてしまう。

口にする事は大切…
けれど、それだけじゃ全然足りない時があるのも事実です。
好きって気持ちが零れたら不安だらけになっちゃう…
一度不安の悪魔に憑りつかれたら、どれだけ言葉を交わしても不安は消えてくれません。

だから人は気持ちを文字に乗せるんだと思います。
相手の五感全部で受け止めて貰うために…
そして本当の気持ちが痛いほど分かるから…涙が溢れるのだと思います。
これが人と人を繋ぐ絆になっていく…
本当に感動できる作品に出合えたと思っています。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは「イマココ」
エンディングテーマ「月がきれい」
どちらも東山さんが歌っています。
この作品のキャッチフレーズをレビューを書く今の段階になって初めて知りました。

「わたしにとってそれは…まるで月あかり」
これってエンディングの一節ですよね…しっとりと歌い上げる東山さんが目の前に浮かんでくるようです。

きっとそんなに眩しさは要らないんだと思います。
そっと寄り添った時、これから進もうとする道が見えればそれで充分なんだと思います。
なんて優しい歌詞なんだろう…

1クール12話の物語でした。
エンディングで流れたラインのメッセージ…とっても良かった。
最終話の静止画…1枚1枚に温かさを感じました。
こういう人生も良いよね…と思えました。
今期BEST10の上位にランクインする作品だと思います。