たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人体の欠損や、精神の欠落でも前に進めるのか。
鋼の錬金術師の素晴らしいところは、主人公たちを含めて基本的に人生において「欠落や欠損」に関して、それでも人は前に進めるのかというところを説いているところだ。
主人公エドワード・エルリックは、幼少期に死んでしまった母親を生き返らせようと試みて失敗し、弟のアルフォンス(犬みたいな名前だが(笑))の身体と、自身の右腕と左足を失ってしまうところから物語は始まる。
現実問題として、人には様々なコンプレックスがあるだろう。見た目や、先天的な病気、精神的脆弱さなどは本人にしかわからない辛さであり、世間一般からかけ離れていたりすると更に追い込まれたりする。
そういう「人間的」な部分に対して目を向けたのは、ひたすら前を向き完全で完璧な人生でなければならないと教えられるような少年漫画の世界には非常に珍しい。
本当の「強さ」とはそういったコンプレックスを前にしても「戦い」続けることであり、差別や蔑称にさらされても途中でやめることはせず、前を向く向上心のことなんだと思う。
映画の中でもヒロインの少女ジュリアは実兄の呪いとも言える忌むべき事態に対して、自分の身体の一部を奪われる結果となってしまう。その後、その少女は自分の命が有限であり、他の人々と何も変わらない一個人だということを悟る。
その時に生じる何とも切ない感覚。少女が個人として成長し、成人女性に変わる瞬間でもあるのだ。
本当の感動とは誰かが死んでしまって泣けるとか、ハッピーエンドだけには留まらず、辛いことがあったり理不尽の中でも生き抜く「強さ」が人を感動させるのだと思う。