「プリンセス・プリンシパル(TVアニメ動画)」

総合得点
86.1
感想・評価
986
棚に入れた
3965
ランキング
211
★★★★☆ 4.0 (986)
物語
4.0
作画
4.1
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
4.0

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

彼女たちが本当に無くしたかった壁とは何なのだろうか?

完走後、手の込んだスパイ物語の脚本に唸らされ続けた高揚感と共に、
まるで雲を掴まされたような、
話の芯を掴みそこねたような空振り感も残りました。

私は本作が序盤、単に1クール分の話数を入れ替えただけの、
単純な時系列シャッフル構成だと舐めてかかっていました。
時系列前後で絡まった伏線の接続も、まずまず順調でした。

ところが、中盤以降、2クール分の話数から1クール分の話数をピックアップしてシャッフルした、
高度な芸当であることが判明。
油断していた私の時系列整理は大混乱w
加えて抜けた話の部分に、まだ語られていない重大な転換点があるのでは?との期待感。
これらが私の未消化感に拍車をかけたのだと思います。


因みにTV放送順(BD/DVDではまた微妙に順序が変わるらしい)にエピソードを並べると……

case13 1 2 9 7 18 16 20(注) 11 22 23 24

注・case20は過去話の語り聞かせが多いので実質case0とも解釈できる。

それらを時系列順に並べると……

case1 2 7 9 11 16 18 20 22 23 24

さらにそれらが元々、分割2クールであると想定して、抜けた部分を*で埋めて並べてみると

case1 2 * * * * 7 * 9 * 11 * 13 * * 16 * 18 * 20 * 22 23 24 ?(注)

注・?は分割2クール目が13話である。
またラストで示唆された最後の一仕事?を想定して埋めてみました。


並び替えて、時系列順に追えば何か分るのだろうか?

そう思いつつも、改めて見直すのも面倒臭いなwと匙を投げかけていた所、
番組終了間際に第1話~8話(caseで言うと1~20)を時系列順にダイジェストしたという、
「アンジェ・レポート」なる動画が公開&本編放送終了翌週に放送され、興味が持続。
流石はスパイ。こういう所は抜かりがありませんw


で、持続した興味を原動力に、本作の感想を整理してみると……。

ラストの着地点自体はスパイ物でよくある王道展開だったと思います。

最初はスパイ同士として、打算も含めて関わり合っていた。
互いに承知の上で、虚飾で塗り固めた関係も受け入れた上でミッションを遂行していた。
けれど、一緒にスパイやっている内に、信愛の情が芽生え、真実であったはずの各々の使命より、
半分芝居であったはずの仲間の関係の方が大事になってしまった。
世界を救うより君とのバカンス♪嘘が誠になるスパイの十八番。
ただ、やはり嘘が真実に切り替わる決定的瞬間を目撃できてない感覚が残っているのです。

上記の時系列順の歯抜けエピソードナンバーを俯瞰してみると、
前半の、プリンシパルの5人が互いの信用できる部分、できない部分を整理する過程。
後半の、各々が背負う使命より女子高生スパイという
芝居で始まったはずの友情が大事だと確信するに至った過程。
これらが未解明だと考えられます。

例えば、case9辺りではドロシーなんかは、
プリンセスの二重スパイ疑惑の懸念を深めてすらいましたが、
終盤ではこれらの疑念も乗り越えた上で?
アンジェ&プリンセスを友人として救う選択をするにまで至っています。
この辺りの心境変化の契機が隠されていると感じて、私はとても気になっています。

もっと言えば、そもそもプリンセスが再三、口にしてきた
女王になってロンドンの壁や、王侯貴族と貧民との壁などの、障壁を無くしたい。
との理想も、どうも怪しいと私は思っています。

大体、幼い頃のアンジェ&プリンセスにとって王女としての役割云々自体、
入れ替わりごっこをして大人たちをからかうための玩具に過ぎなかった。

結局、彼女たちにとって大事だったのは個人間の友情。
革命だの使命だの、それらは友情を阻害する各々個人間の壁を取り払うためのフェイクだったのでは?

何より、第1話(case13)即ち、エピソードの中盤戦までは、
嘘に塗れた捻くれクロトカゲ星人だったアンジェの無表情が、
終盤では、すっかり友情に時めく純情な乙女の顔になってしまっている。
どんな経緯で彼女の鉄仮面が剥がされていったのか?気になって仕方がありません。

「アンジェ・レポート」のラスト、アンジェ&プリンセスのピアノ連弾という、
世界情勢とはかけ離れた、極めてプライベートなシーンを選択した
脚本の選択を眺め、憶測を巡らせつつ、
解答編の二期、分割2クール目の実現を渇望する尊氏なのでした。


ロンドンの霧は未だ晴れていません。



【二話感想】これはかなりガチな嘘つきエンターテイメント!

{netabare}正直、一話の嘘連発を観た時点では、私はまだ本作が萌えキャラに、
騙し合うスパイの伝統芸を纏っただけの深夜アニメだと侮っていましたが、違いました。

一話は言ってみればガイダンス。騙されることに慣れてない視聴者に、
嘘を読み解く下地を整えて貰うためのオリエンテーションに過ぎなかったようです。

状況が二転三転する度に、脳汁が出る。
噛み応えがある騙し合いの脚本に、私がこれほど興奮するのは、
ゲイリー・オールドマン主演のスパイ映画『裏切りのサーカス』以来です。

目指す所がハイレベル故に、今後、脚本には一つ踏み外せば破綻する可能性だけでなく、
視聴者がふるい落とされるリスクもつきまとうと思われます。

スタジオが万策尽きて総集編wもあり得そうな制作陣容ですが(苦笑)
本作の場合はむしろ、考察が追いつかなくなった視聴者が万策尽きる前に、
六話辺りでまとめレポート風の振り返り総集編を挟むのも一手かもしれません。{/netabare}



【一話感想】嘘つきの一分(いちぶん)

{netabare}古今東西スパイはみな嘘つき。
必然スパイを描いた物語は嘘を美化した演出を多用します。
嘘は罪と糾弾するなど無粋。
時に毒舌やユーモアも交え、如何に華麗に騙すか。
存在そのものが虚飾であるスパイたちは、嘘にかける情熱が半端じゃありません。
欺し騙され……業を背負ったスパイ稼業は見る者を惹き付ける娯楽へと昇華するのです。


19世紀・蒸気機関の煙が立ち籠める大英帝国風のロンドン。
新物質「ケイバーライト」により空中艦隊実現、覇権国家へとぶっ飛んだ挙げ句、
革命により「ロンドンの壁」を境にアルビオン王国とアルビオン共和国に二分された架空世界。

対立の狭間に“女子高生”スパイをロンドンに暗躍させる本作は、
“嘘つきエンターテイメント”を自称し、嘘を多用どころか濫用w
個々の嘘には一定のセンスを感じたものの、
嘘が多すぎて、風味は出しすぎた紅茶の如く渋いw

このまま“小さな嘘”の乱射ばかりが続いたらしんどそうですがw
本作は冒頭から産業革命社会の貧困と矛盾、「ケイバーライト」の不都合な真実?など、
“大きな嘘”暴露の伏線も垣間見え、いい意味で不穏なムード。
全ては煙るロンドンの空に霧消する嘘に過ぎないのだろうか?
それとも各スパイ女子高生が嘘を纏った理由が開示される過程で、
スモッグの切れ間から一筋の“真実”の光明が差すこともあるのだろうか?

魔都ロンドンに蠢く謀略と嘘に巻き込まれないよう、
ある程度、斜に構えて楽しみたい、ビターな雰囲気の作品です♪


……黒蜥蜴星より愛を込めて(嘘w){/netabare}

投稿 : 2017/10/23
閲覧 : 392
サンキュー:

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