「学園戦記ムリョウ(TVアニメ動画)」

総合得点
70.8
感想・評価
149
棚に入れた
891
ランキング
1480
★★★★☆ 3.8 (149)
物語
4.0
作画
3.6
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

人類の精神的進化の理想形。ゆるい日常と未知との遭遇が混在するジュブナイルSF。NHKの名作です。

NHK衛星アニメ劇場で放映された、SFアニメ全26話。
非常~に呑気な雰囲気の中で、宇宙人の侵略や外交が水面下で進んでいく…
一見すると退屈なアニメなんですが、実は超エキサイティング。これぞ不朽の名作。
…NHKはこういう名作をこそ、時折でいいから再放送してほしいものです。

{netabare}『物語』
時は2070年、近未来だけど現在とあまり変わらぬ日常が続く、どこか懐かしい雰囲気。
突如現れた謎の巨大物体、それと戦う謎の巨人…
いきなり政府発表で呑気に明かされる「宇宙人は実はいました」
主人公の普通の中学生・村田始(はじめ)が度々遭遇するフシギな友達や事件、でも普段と何も変わらぬ日常は揺るがない…
静と動。日常と非日常が交錯する中、水面下では侵略宇宙人や銀河連邦と地球の在り方等々が進行していく。
…淡々と日常描く地味な作風かと思いきや、ジリジリと盛り上がっていく。

非常~にゆるい雰囲気の日常と、地球人類どころか銀河連邦まで絡む大スケールが混然一体としている、フシギな作風です。
平凡な中学生の平凡な日常、水面下でなんか凄い事が起こっているっぽい緊迫感、地球と宇宙の関係を知る者と知らぬ者、それでも、誰もが当たり前に日常を過ごし、子供たちは成長し、大人たちは見守る…
銀河連邦やら人類の存亡やらの大事件、でも、そんな大スケールを意に介さぬ人々。
これぞ精神的成熟の理想の在り方、究極の優しい世界か!

泰然自若。

教育的・道徳的な押し付けがましさを感じさせぬ自然体で、個性の違う一人一人が、自分と他人と世界をあるがままに受け入れ、生きていく。
不自然に良い人過ぎるわけでもない、子供たちは悩んだり迷ったりもする、本当に平凡な人々だけど、(ああ、こういう関係や生き方っていいな)と思える。
…水面下の大スケールに不釣り合いな地味~なテンポなんですが、本作で描かれる、精神的成熟の在り方は本当に素晴らしいです。
終盤、異能や宇宙の関係者「天網の民」と、全く事情を知らぬ一般地球人(村田始たち移住組)それぞれが、各々の意思で選択し、ごく自然に結束していく展開は圧巻でした。
終盤、試される人類。選択。そして…
それは地味な日常系の中で、既に正解を出していた…
最後まで視聴するとそれが分かる。

神道ファンタジーや呪術要素とSF融合した感じの世界観も素晴らしい。
実は古来より宇宙との関りがあり、人知れず地球を守ってきた「天網の民」
その切り札「シングウ」など、呪術的・神道的な独特の雰囲気。
昔ながらの日本の村社会の会合で、地球人類と銀河連邦の関係を議論するような、フシギなスケール感。
バトルパートでのシングウや宇宙戦艦などの大規模バトルも、マモリビトたちの異能バトルもフシギな雰囲気。

ジュブナイルとしては、天網関係者の子供たち(生徒会メンバー)の苦悩やラブコメが見所でした。
その彼らも、何も知らぬ一般生徒と変わらない学園生活を送っている。
運動会などの日常系のイベントひとつひとつが活き活きと描かれていて、これも本作を貫くテーマにちゃんと結びついている。

総じて、オンリーワンなソフトSFの傑作です。
地味、退屈、ワケが分からん…
ように見えて、日常も非日常も全部意味がある。
大規模なスケール感と、小スケールだけど大切な日常を両立しつつ、理想の成熟を示してくれている。
もし、人類が宇宙規模の交流をするならば、これくらいの精神的成熟、ステージに立たねばならぬ。
それは人類の革新、ガンダムでいう「ニュータイプ論」
それを観念ではなく、自然体の日常(と非日常バトル)の中で答えてくれた。
…現実は、到底及んでない、それゆえに、理想を示した創作作品なんでしょう。


『作画』
セルからデジタルに移行しつつある2001年に、珍しくセル画を用いた作品。
セル画の良さは色褪せない。
キャラデザは地味だけど、那由多や晴美など好みです。
見所はSFでありながら呪術要素が濃い独特の戦闘シーン。
派手では無くても、引き込まれます。

『声優』
ブレイクする以前の杉田智和さんや、浅野真澄さん、釘宮理恵さんなど、後の人気声優の若手最初期の好演多し。
朴璐美さんのツンデレ美少女も絶品。可愛い系の役もいける!
特に杉田智和さんの初々しい感じが、守口京一のキャラにベストマッチでした。
宮崎一成さん、野島健児さんの落ち着いた感じも良いです。
阪口大助さんはモブの兼業多くてすぐにわかる。


『音楽』
OPがあまりにものんびりしていて、まさか侵略宇宙人とバトルするとは思うまい。
アニメソングで、ここまで大らかな青春ソングは中々無い。
でも、本作の描く精神的成熟をしっかり印象付けている。

音楽を「ルパン三世パート3」の大野雄二さんが手掛けており、ルパンっぽいBGMも。
「シングウのテーマ」が印象的な名曲、本作思い出す度に脳内で「チャッチャッチャチャッチャチャ~♪」と再生されます♪
特にバトルシーンのBGM「戦え,那由多!~シングウのテーマ Variation 3」は大好き。
時々サントラで聴いてます。


『キャラ』
泰然自若。子どもも大人も、モブに至るまでも精神的に成熟しており、メンタル強いです。
主人公の村田始は、何の力も無い平凡主人公なのに、動じない強メンタルだけでしっかりと存在感を見せた。
最強能力者の無量と普通に友達として、存在感で負けてない。
「無限のリヴァイアス」の相葉昴治(あいばこうじ)とは別ベクトルで、すごい一般人主人公です。
始以外でも、天網関係者ではない一般人たちも、軒並みタダ者ではなかった。
…妹の双葉ちゃんかわいい。くぎゅうう!

謎の転校生・統原無量(すばるむりょう)も、終始謎めいた存在でありながら、やはり常に存在感を見せた。
彼の正体が、人類の命運に関わっていく。
無量の姉の瀬津名さんの謎っぷりも中々。

生徒会メンバー、天網関係者が軒並み印象的。
ツインテールのツンデレ、守山那由多(もりやまなゆた)ちゃん可愛いです。
戦う変身ヒロイン、変身後は呪術人形めいた巨人。
ツンから、精神的に未熟さと、始たちとの関りで揺さぶられ成長する度に可愛さアップ。
…何気にNHKヒロインの中でも上位の可愛さ。

熱血おバカな守口京一も非常に良キャラ。
イケメンで実力者だが、無量のカマセ…
作中で彼が精神的に一番未熟、それゆえに、一番成長ドラマが良かった。
峯尾晴美(みねおはるみ)とのラブコメの波動は微笑ましい!
熱血武闘派と思いきやサポート系というギャップ、終盤山場での成長とリーダーシップ良し。

奥ゆかしい格闘美少女・峯尾晴美ちゃんも可愛いです。
重い使命を背負う辛さ、その中での交流や成長、そしてラブコメ。

大らかな生徒会長・津守八葉や、情報通のクセ者ショタ・守機瞬など、精神的にもタダメ者ではない。
天網関係者ではない友達の中にも、互角に存在感示す子がいるのも本作らしい。

大人たちも、始の両親など、精神的成熟の理想形。
天網関係者の先生がめっちゃ強くて驚き、教育者としても良き先生。


一見飄々とつかみどころの無いヘンな外人だが、実は…
なジルトーシュのキャラも面白かった。
銀河連邦や、連邦と敵対する勢力の宇宙人たちも、いつの間にか地球に馴染んでたり、立場の違いが最終的にどうでも良くなる大らかさ。
真相を知る「8人の勇者」たちも、過度に関わり過ぎない存在感がむしろ良かった。{/netabare}

投稿 : 2017/07/14
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サンキュー:

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