yuugetu さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
異能バトルものというより紗名の成長物語
2017年春アニメ。全12話。
原作未読です。
堅実なストーリー展開ときちんとした世界観の構築が魅力。一番の見所はやっぱり蔵六と紗名ですね。
独特の世界観ですが、第1話から掴みがよく入りやすい作品でした。
紗名と蔵六の関係性を軸に紗名の成長ものとして一貫していて、バトルものを期待するとちょっとイメージが違うかも。
キャラクターの性格にはアニメ的な味付けが意外と少なく、反面キャラデザの可愛らしさとSF的な設定が現実感をいい意味で薄れさせてくれていました。感情移入も出来るし萌え的な見方も出来る良いバランスだったと思います。
作画には少し違和感があったかも。
背景が綺麗で精密なのは良いことですしキャラデザのコミカルさ・シンプルさも好きですが、同じ画面に並ぶと場合によってはミスマッチな印象が。CGを多用しているのもあって個人的には意外と気になる部分でした。
{netabare}
第1部は紗名が組織を出て現代社会に居場所を獲得するまでの物語でバトル要素が多く、第2部は社会に順応して友達を作る物語なので日常要素が多くなります。
紗名の身の回りに視点を絞っているのでほのぼのが多くなっていますが、社会背景から考えるとその後は大変かも知れませんね。
紗名の成長が一番感じられたのが、ミニーCの一件と羽鳥とのやりとりでした。
かつてミニーCに否定された紗名は、羽鳥に対して自分の存在を肯定すると語りました。
蔵六の影響で沙名はごく普通の子どもとして、精神的にすごい速度で成長しているのですね。未来の紗名は「蔵六が私に自分が誰か教えてくれた」と言いましたが、それだけでなく自分自身を肯定し愛することができるようになっている。
衣食住・生活の基本に始まり、他人や自然に対する興味、人に対する信頼、自分の考え方をはっきり持った上で自分と違う考え方を理解し尊重する気持ち。段階をしっかり踏んで紗名の成長を描いてきたのがとても良かったと思います。
ミニーCは夫の腕をトランプにしていますし、夫を蘇らせられたとしてもそれもやはりトランプなのではないでしょうか。彼女が紗名をトランプだというのなら、沙名と蔵六に放ったミニーCの言葉は自分に跳ね返る。どう転んでも自分の願いは叶わないことが本人にもわかっていたはずです。
「自分が何者か教えてくれた存在」はミニーCの場合は夫だったのかな…。けれどもひとりで生きていく強さを得ることは出来なかったんですね。
{/netabare}(2017.7.10)