蒼い✨️ さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
最終兵器イゼッタ。
アニメーション制作:亜細亜堂
2016年10月 - 12月に放映された全12話のTVアニメ。
監督は藤森雅也。
【概要/あらすじ】
とある世界のヨーロッパ。
ナチスドイツのごとく領土的野心を燃やす皇帝オットーが専制君主として君臨し、
強大な軍事力を擁するゲルマニア帝国(ドイツ)が存在した。
度重なる侵略戦争でノルド王国(ノルウェー)、テルミドール共和国(フランス)が既に降伏。
ヨーロッパの統一支配を目指す帝国の標的として、アルプス山脈付近に位置する、
エイルシュタット公国(リヒテンシュタイン公国)という自然に囲まれた風光明媚な小国があった。
アルプス山脈を迂回せずに南進する戦略上、抑えておきたいらしい。
1940年、公国の公女フィーネは間近に迫ったゲルマニア帝国の侵略に対抗すべく、
ブリタニア王国(イギリス)の協力を取り付けようと外交交渉のために、
中立国ヴェストリア(スイス)に向っていた。其の汽車の中での帝国軍人による追撃。
逃走の中、車両でフィーネは物々しいカプセルを目撃する。
最高軍事機密のカプセルの中には魔女が囚われていた。
反帝国の動きの機先を制しての帝国の素早い侵攻開始により対応が間に合わなくなり交渉は破談。
ゲルマニアの親衛隊にフィーネが囚われ、帝国の帝都ノイエベルリンへ空輸で連行される中、
機内に収容されていたカプセルから魔女が目覚めた。赤毛の15歳の少女。その名はイゼッタ。
彼女こそ最後の魔女であり、フィーネを守り帝国に抗う最後の希望。
平和な世界を築くためにゲルマニアに立ち向かう彼女たちの戦いが始まったのだった。
【感想】
空飛ぶ魔法少女が重火器で戦うというのも一つのジャンルとして成立したと言うべきでしょうか?
となれば作品ごとのオリジナリティでセールスポイントを作るのが大事だと言えますが、
白いドレスを纏い対戦車ライフルを魔女の箒代わりにするというのはビジュアル的にイケていますね。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「魔笛」を歌ったり、
ドイツ語で「エイルシュタット国歌」を合唱したり、
白黒映像時代の戦争記録映画風の演出をしたりで、
国際色を強調した感じは好みといえば好みです。
opが『アクエリオン』のAKINO。edが歌シェリルのMay'n。音楽制作がフライングドッグ。
楽曲面では割りと評価高めです。
さて、このアニメは魔女の扱いがスーパーマン。
魔女一人いれば戦場を支配し師団を簡単に屠ることが出来る。
うん?このアニメは戦車や飛行機がいっぱい出てきますし、兵士目線をいっぱい取り入れていますが、
軍隊は魔法の前では単なる噛ませ犬であり、軍団による戦略・戦術といった軍事の方面で語る部分は無い感じ。
イゼッタを活躍させる作戦らしきものは立てていますが、実際はイゼッタのスペックと根性頼りのワンマンアーミー。
とある設定で魔女の活動に足かせを付けて万能ではないという扱いにしていますけどね。
帝国が戦争の歴史で作り上げた兵器や戦術を、愚直な魔法少女のオカルトパワーで蹂躙する。
勧善懲悪っぽい、正義のヒロイン無双ものっぽい味付けですが、
こういうのが好きな人は好きなのかもしれません。
これは戦争アニメっていうより、むしろ戦場ヒロインアニメ。
ミリオタ的には、あんまり美味しくない内容ですかも。
女の子としてのイゼッタのささやかな日常。
イゼッタと姫様との百合にも似た絆。
イゼッタや姫様をサポートするメイドや近衛などの女性陣。
視聴者サービスシーン。
魔女の秘密をめぐる暗躍。
イゼッタを上回る最大の強敵の出現。
戦場で戦い散っていく軍人は脇役に過ぎず、物語のウェイトは戦争そのものよりも、
イゼッタを中心とした魔女方面に向っているような?
個人的には普通の軍人が人間の知恵と戦術で戦局をひっくり返すのも観たかった気がしますが、
公国軍が帝国軍の前では多勢に無勢過ぎますし、帝国軍もイゼッタには歯が立たない。
物語の中で戦闘が何度も繰り返されますが、
イゼッタと姫様の百合描写と魔女伝承関連がメインディッシュで、
第二次世界大戦を模した舞台設定は、単に戦況づくりに借用しているだけであって、
実際の所、史実の世界大戦設定は全く違うものに入れ替えても、
例えば、このアニメがロボットSFでも中世騎士時代でも、
モンスターが徘徊する完全ファンタジー異世界でも成立するよね!て思いました。
私はアニメには満足してないものの、『幼女戦記』のほうが時代設定を作品に連結させた上で、
戦争のダイナミズムが描けていたと思います。
まあ、イゼッタというアニメは戦争を娯楽ではなく平和を壊す忌むものとして扱っていまして、
作品のスタンスが違いますので、比較することに意味は無いのですが。
女の子を可愛く描こう。戦争の悲劇っぽく人間ドラマを取り入れよう。
世界平和を願い少しでも良い世界を作ろうとした少女たちの友情と絆の物語。
脚本家・吉野弘幸による意欲的なオリジナル作品ではあったと思いますが、
あの時代にそぐわぬ21位世紀でも実用化されてない科学技術が物語の都合で出てくる。
盛り上がりにもうひと押し足りない終盤の戦闘。
クライマックスを作って1クールで無難にまとめあげようというのが見えてきて、
傑作と呼ばれるためには一皮剥けなかったアニメだというのが観ていて感じられました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。