岬ヶ丘 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
小説を読んだかのような充実感と余韻
今期は個人的に不作のクールだった印象ですが、その中でも1話から心を鷲掴みにされた良作だったと思います。オリジナルアニメーションでありながら、まるで原作が小説のような瑞々しい恋愛を充実感と余韻の残る設定や展開で、イメージ的には京都アニメーションの「氷菓」に近い雰囲気を感じました。Wikipediaによれば同社の「たまこラブストーリー」に影響を受けたとのこと。
最近のアニメはやたら高校生が主人公という作品が多い中、中学生を題材にしたのか大きなポイントかなと思います。高校生にもなりきれていないあどけなさを感じさせながら、はじめての恋愛への嬉しさと戸惑いなどをリアルに描いている。主人公たちが悶々とするなかで揺れ動く感情を丁寧に掬い上げて、映像にしていたという印象です。ラインといった今どきの中学生の日常をしっかりと取り上げながらも、どこか普遍的で誰もが共感できる恋愛物語がこの作品の一番の魅力かなと思います。
主人公が小説家を志していることもあり有名小説が各回タイトルになっていたり、太宰の言葉の引用なども魅力的に用いられていました。
ヒロインの女の子と付き合うことにあった後も、ヒロインの親友がいい意味で物語をかき乱してくれたりヒロインが引っ越したりと、王道かもしれませんが毎回先が気になる展開でした。親友との三角関係のような展開もドロドロさせず、最終的にすっきりできる終わり方で好印象。
声優さんのお芝居も吐息やため息ひとつで、キャラクターの心情を端的に表現していて最近のアニメには少ない生の空気を堪能できた気がします。
東山さんが歌うOP・EDや劇中歌もどれも物語を盛り上げてくれましたし、音楽面では完全に東山無双状態でした(笑)。元々歌唱力には定評のある方ですし、先生役でも出演するなど作品の影のMVPだと思います。
キャラクターデザインも淡い色合いが基調で登場人物の純白であどけないイメージを喚起させてくれて好印象でした。背景も非常に綺麗で、春の桜やお祭りの風鈴のシーンなど、美しく息をのむ場面が多かったです。
唯一欠点を挙げるならメインキャラと比べるとモブキャラのCG感が強すぎた点かな。いかにもCGな見た目だったので、もう少し頑張ってくれるともう言うことはなかったと思います。
事前情報が他作品に比べて少なくオリジナルということもあり、期待と不安の入り混じる作品でしたが、蓋を開けてみれば純愛を描いた安定感のある一作でした。個人的に間違いなく今期1番の良作でした。