「借りぐらしのアリエッティ(アニメ映画)」

総合得点
66.0
感想・評価
663
棚に入れた
3154
ランキング
3070
★★★★☆ 3.6 (663)
物語
3.4
作画
4.1
声優
3.3
音楽
3.7
キャラ
3.5

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101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ジブリ後継作品としてではなく、米林宏昌・長編初監督作品として見直してみて……

原作の英国児童文学『床下の小人たち』は未読。

このスタジオジブリ作品制作を通じて、
本作の企画・脚本も担当した宮崎駿監督らの魂が後継候補の米林監督にどう継承されていくのか?

初見時は私もそういう期待で鑑賞しました。
小人たちが人間の住居から物品をチョイ借り?するために奮闘する。
ミニマム視点で人間生活の場がギミック満載のアスレチックスと化す冒険要素。
その他、サイズギャップに細やかな観察眼を通じて、新たな構図を発見していく、
ジブリならではの映像表現開拓……。

この辺りのエンタメ要素に多くの人々が往年のジブリを夢見た結果が、
90億円の興行収入に繋がったのだと思います。

他方で、結局、本作は何を伝えたかったのだろう?
特に何てことはないお話だった。
当時そういう感想も散見された作品でもあると思います。
私自身にも当時、何かモヤモヤした物も残った作品でもありました。


で、今回、米林監督の次作『思い出のマーニー』を見た後で、
本作を再見してみて思ったのは、
やはり米林監督はアニメーションでより深く心情変化を描写していきたい
“静”のアニメーターだということ。

『借りぐらしのアリエッティ』と『思い出のマーニー』は両作品とも、
少年少女が一つの不思議体験を通じて、
これまでの諦観した心に光が差す……というシナリオ構造に類似点があります。

それは本作においても繊細な心情表現によって描写が試みられており、
拾ってみると好感できます。
ただ、監督がジブリで培ってきた表現の多くを
心理描写に振り分けた『マーニー』に対して、
『アリエッティ』では小人の探検要素という“動”にも多くのソースが割かれ、
細やかな“静”の表現が覆い隠されてしまっている感じもします。

この辺りに課題を見出したからこそ、
監督は本作と似たテーマで“静”に全振りした『マーニー』にて
再挑戦したのだと私は思っています。

『マーニー』は個人的に監督が持つ“静”のセンスが極まった傑作だと思っていますが、
一方で“静”故に鑑賞者が積極的に心理を読みに行かないと
メッセージを受信できない作品だとも思っています。


そして『マーニー』公開後、スタジオジブリを退社した米林監督は、
今週、新スタジオでの初長編映画『メアリと魔女の花』の公開に踏み切ります。
何でも最新作は“動”も意識したファンタジー作品になるのだとか……。

……しかし、新作キャッチコピーが「魔女、ふたたび。」と言うのが何とも(苦笑)
この先どんなに独立しても、ついて回るであろうジブリ出身のという視線に、
敢えて逃げずに向き合おうという監督の反骨も感じます。

よって最新作評価は多分に波乱含みの予感ですがw
私はキキの幻影などには惑わされず、監督がどんな心情を描写してくるのか?
“動”の要素が監督の“静”の表現とどう折り合うのか?

そしてキャストでは神木隆之介さんに注目。
『アリエッティ』の頃は、正直、深い心情まで表現し切れているとは思えなかった彼の演技が
『君の名は。』の経験などを経てどう成長を遂げているのか。
それらの点も意識して最新作劇場鑑賞に挑みたいと思います。

投稿 : 2017/07/05
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サンキュー:

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