MLK さんの感想・評価
2.2
物語 : 1.0
作画 : 2.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:今観てる
無題
異世界×料理。既存のジャンル同士の掛け合わせによって生まれた作品、いわばカツカレー的発想が出発点となっているが、カツもカレーも美味くない。ここでは、カツ=異世界要素、カレー=料理漫画要素として論を進めていく。
まず美味しいカツカレーを作る大前提として必要なのは、カレーが美味いこと、すなわち料理アニメとしての完成度だ。料理物で必要なのは、作る過程の面白さとそれにまつわる作り手や食べ手のドラマだ。孤独のグルメのように日常の中の食事を切り取った作品も存在するが、異世界食堂は皆が能動的に食べにくる店であり、日常には不向きであるため、王道路線をやろうとしているという仮定で話を進める。
この手の話のパターンとしては、何かしらの人情話があり、それぞれ問題を抱えた登場人物がシェフ必殺の料理を食べることによって救いを得て満足しながら店を出ていく、といった時代劇パターンと、食堂を運営していく中での従業員たちのドラマパターンの二つがある。前者は客、後者は従業員に光を当てていくのが特徴であり、それぞれ短編集、長編として作られることが多い。異世界食堂においては、入店に限定的な条件を持つことから考えると恐らく前者のパターンだろう。少なくとも1話Bパートはその作りだった。しかしその人情話が上手くない。
不幸な生い立ちを持った少女がシェフの優しさに触れ幸せを得る、と省略して書けば悪くないように思えるが、物語は記号で書くことはできない。まず分からないのが、シェフの個性の無さだ。Aパートでシェフが行なったのは、料理と接客と客への注意だ。これ自体は普通のことであるが、その中でシェフが職人的落ち着きを備えた人間である、以上の個性が見受けられなかった。そのため急に飛び込んできた少女に対して普通の人間なら怒るところで見せる優しさに説得力が欠け、シナリオの都合上少女を受け入れたとしか思えなくなっている(実際無駄なシャワーシーンを入れて少女の働く描写をカットしていたところを見ると、ドラマ部分は無駄だと思っているようだ)。これが、カレーの問題点だ。
カツの問題点は、カツの味が全くしないところだ。まだ1話なのでこれから活かされるのかもしれないが、モンスターを人間に置き換えても問題が無い。確かにカツが乗っているだけで客は呼べるかもしれないが、物語の完成度には一切関係がない。
*ここからは筆者のこうすれば良かったという妄想です
もっとも、この組み合わせで1話が上手くいく可能性もあった。ヒントは、冒頭の「なんでも出す飯屋があっても良い」といったやり取りだ。この台詞には、料理ならなんでも認めるといったシェフの哲学が表れているが、この多様性という物へのスタンスを上手く拡大すれば、現実社会のメタファーである異世界からこぼれ落ちた少女という弱者を助けることに、深みと説得力を出せたかもしれないし、わざわざそんな台詞を入れたということは、実際作り手はそう考えたのかもしれない。
しかし、本当に多様性へのメッセージを発しているならば噴飯物だ。なぜなら、この物語が臆面もなくやっているのは、1番美味しい我々の食べ物が異世界でそのまま受け入れられるというアメリカもびっくりの自分本意の押し付けである。実際にこんなことをしても上手くいかないことは食の歴史が証明しているし、冒頭でのたまっている通り、そもそも洋食だって多分に日本流にアレンジされている。それが分かっていて何故こんな話にしたのか、私には理解しかねる。恐らく、作り手がやりたいのは食に根ざして相互理解を語ることではなく、歴史を積み重ねて改良してきた俺たちスゲーなのだろう。
結論を言えば、これはカツカレーに見せかけたいつもの無双ラノベ系の何かであり、ラノベが好きな人にはオススメ、そうでない人は全く見なくてよい作品であることは断言できる。
2話視聴
笑いの方向としてはカルチャーギャップコメディのはずだけど、異世界の文化とぶつかり合う描写がほとんどなく一方的にすごいすごい言ってるだけなので一つも面白くない。なんだかなぁ。