おぬごん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
初恋を真っ正面から描いた意欲作
中学3年生の初恋を描いたオリジナル作品
公式ツイッターによると、フライングドッグの南プロデューサーが岸誠二監督とシリーズ構成・全話脚本の柿原優子に持ち込んだ企画だったみたいですね
タイトルは「"I love you"を夏目漱石が『月が綺麗ですね』と訳した」という俗説に因みます
俗説ですよ!実際にはそんなこと言ってませんよ!
ストーリーは文学少年・安曇小太郎くんと陸上少女・水野茜ちゃん、ともに中学3年生の初恋模様
奇を衒わず、真っ正面から中学生同士の恋愛を描いた作風は深夜アニメとしては逆に斬新かつ新鮮でした
岸監督お得意のギャグや楽しい会話もほとんどなく、とにかく2人の恋模様に焦点を当てていましたね
初めてだから右も左も分からなかったり、何も知らないからこそ大胆な行動が取れたり、何かと気恥ずかしくて他人には秘密にしたり…
自分もかつて経験したような初恋のあるあるが詰め込まれていて、見ていてほんとキュン死にしそうでしたw(キュン死にってそれこそ俺が中高生の頃の言葉だよな…ラブ★コンだし…)
ファンタジーもなければご都合展開すぎることもない、本当にありのままの中学生が描かれているようでした
…まあ細かいツッコミどころが無いわけではないですけどねw{netabare}制服の中学生2人がラブホに入れるか!とか、10年近くずっとスマホとLINEが現役なのかよ!とか{/netabare}
また描かれているのは今も昔も変わらない甘酸っぱい初恋模様なんですけど、この作品のキーアイテムは現代の若者の象徴とも言えるスマホとLINEなんですよね
スマホはもちろんケータイってあまりに便利すぎるんで、古典的なすれ違い展開なんかを描く際に邪魔になることがあるんですよね
ケータイの電池が切れたり故障したりして連絡が取れなくなるアニメのシーンや、そもそも時代設定が不明瞭でケータイが出てこないアニメ、見覚えがあるんじゃないでしょうか
でもこの作品はそんな「逃げ」の手は一切打たず、徹頭徹尾スマホとLINEが大活躍します
普遍的なテーマを描きつつそれをしっかりと現代の物語に仕立て上げ、そして最大限に演出に活かす
素晴らしく意欲的で素敵な試みだったと思います
あと初恋あるあるだけじゃなくて、思春期あるあるもかなり描かれていましたよね
家族でガストに行ったら同級生に会っちゃって何か恥ずかしくなったり、中学生のくせに太宰治を読んで世界が分かった気になったり、照明の紐でシャドーボクシングしたり(私はヘディング派でした)
このあたりはギャグの得意な岸監督らしいな~と思いました
ちょっとした人間描写で視聴者の心を掴むのが上手いんですよね
…とここまで褒めちぎってきましたが、個人的には「お気に入り」まであと一歩足りなかった印象なんですよね
中盤までは本当に毎週楽しみで、毎週TVの前で悶えていたんですが…慣れちゃったんですかね…
あと中盤過ぎあたりで、{netabare}具体的には遊園地回あたりで、この2人ちょっとやそっとじゃ別れないし無駄に劇的な展開も無さそうだ{/netabare}と気付いてしまって、自分の中でストーリーに意外性を感じなくなってしまったのかもしれません
美しく綺麗にまとまりすぎているが故の弊害のような…もちろん完全に好みの問題ですけどね
岸監督と言えばギャグ!原作付き作品は素晴らしくてもオリジナルはそこまで…という印象でしたが、この作品で改めて氏の懐の広さ、視聴者の心をつかむ巧みさ感じさせてくれました
まあこのあたりは脚本家や助監督に入った2人、特に池端隆史の力も大きかったかもしれませんが
ただ中途半端に文学を絡めようとして逆に薄っぺらくなってるのは「乱歩奇譚」に続く悪癖かも…さすがに8話サブタイトルの「ヰタ・セクスアリス」はどうかと…
まあ今回は主人公が中学生なせいで却ってそれっぽくなってましたけどw
作画では田舎すぎず都会過ぎず、それでいて情緒と歴史を感じさせる川越の町並みと、
「放浪息子」を思わせるような淡く柔らかい絵柄が、繊細な作品の雰囲気を作り上げていました
小太郎の舞などは非常によく動いていた一方、CGでヌルヌル動くモブには違和感がありました
音楽はOP、EDともに東山奈央で、さらには挿入歌も全て東山奈央が歌っていました
別に東山奈央という声優自体は好きですし挿入歌のチョイスもとても良かったんですが、さすがに東山押しが強すぎて違和感がありました…CMも多かったですし
ところで視聴済みの皆さん、{netabare}EDのあれ、気付いてました?
私は最終回まで全く気付きませんでした…w
だって茜が「カレリン」とか言っちゃうバカップルになるとは思わないじゃん!!www{/netabare}
最後に余談ですが、この作品川越が舞台ということもあって、4月には川越に通じる東京メトロの車内や西武池袋駅のホームに映像付きの広告が貼られまくってたんですよね
宣伝に力を入れすぎる作品にはあまり良い印象がなかったんですが(日常とかバンドリとか…)、
この作品はアニメファン以外が見ても大丈夫で、そしてアニメファン以外にも見てほしいような良作でした
ただ、人に勧めるのは下手な萌えアニメよりちょっと恥ずかしい…というか照れくさいかもしれませんw