「政宗くんのリベンジ(TVアニメ動画)」

総合得点
85.9
感想・評価
1259
棚に入れた
6811
ランキング
222
★★★★☆ 3.5 (1259)
物語
3.4
作画
3.6
声優
3.6
音楽
3.4
キャラ
3.6

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ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ナルシストの普遍性

ダイエットでイケメン細マッチョに変身した「豚足くん」が、復讐と称して接近する彼女に逆に振り回されてしまうラブコメディ。

同期に放送されていた、高校生が当たり前のように性行為を繰り返す別アニメに比べると、キスで大騒ぎするアニメ的なラブコメはいかにも幼く見えがちだが、むしろそんな本作の方が真摯に恋愛という経験を描いているように思える。


恋愛、特に思春期の恋愛が物語化されやすいのは、あのひと=他者と向き合うことで、自分という存在が他者の視線にさらされる自意識の怖れやおののきが、明瞭に主題化されてくるからだ。

彼女に翻弄され、彼女の視線に映る「自分」と、イケメンの「自意識」のギャップにさらされる主人公は、ナルシストという設定とは裏腹に、自己愛の防壁に閉じこもることなく、彼女という他者の審級に潔く自分を委ねている。
彼女から見た自己の像を想像して主人公が振り回されるのは、主人公が彼女の視線に真っ向からぶつかっているからに他ならない。

暇さえあれば鏡を見つめては自分の姿に見入る主人公は、コメディ的なステロタイプのナルシストを表現しているように見えながら、思春期の少年少女が頻繁に鏡を覗いて前髪を直すしぐさと同型的だ。

ナルシストぶりを笑いながら拒否感が無いのは、他者の視線の前に自分がどう見えるかという、自己イメージと他者の視線の間で揺らぐ思春期の自意識が、こうした描写で典型的に表現されているからだろう。
イケメンに見えているはずだと思いながらも、つい「豚足くん」の自意識が顔を出して自信を喪失する主人公の自意識の揺らぎは、そのまま思春期の自意識の揺らぎとして若い視聴者には共感できるのではないだろうか。

オッサンからは縁遠くなった感覚だが、いっけん典型的ナルシストの主人公の造形は、当たり前の思春期男女を象徴するものとして、巧妙に機能しているように思う。



ところで、鏡に映した自分を見つめるナルシストぶりの描写は、おそらく作者や製作者の意図を超えた部分で、奇妙な迫真性がある。

もう10年ほど前の事になるが、体重を落として「ぽっちゃりデブ」の豚足体型から「痩せぎす」体型に変った(洋服は全滅した)
以来リバウンドもせずに10年たつが、いまだに「痩せた男である」という身体イメージを持ち切れていない。

10年たつのに、温泉の脱衣所の大鏡に映った「痩せた男」の全身像にギョッとしたり、洋服屋で服を選んでは「こちらのサイズはお客様には大きすぎます」と店員からダメ出しされたり、無意識に貫禄ある人のようなしぐさをしてしまって失笑されたり、と「自己イメージ」の乖離が克服できていない。
身についた「身体イメージ」の惰性は、想像以上に根強い。

おそらくダイエットをした人は思い当たるだろうが、体型が変わっても、自分の身体イメージが簡単に更新されるわけではないのだ。

そうした点で、鏡を頻繁に凝視して細マッチョとしての身体イメージを固定しようとしながらも、「豚足くん」の自己イメージが執拗に脳裏から離れないままの主人公の造形は(たぶん偶然だが)異様なリアリティを発揮している。

投稿 : 2017/06/25
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