ようす さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
東京で大きな地震が発生。そして家族のかけがえのなさに気が付いた…。
この作品は、観るかどうかとても迷いました。
震災の恐ろしさや悲しさ…
そんなやるせなさの中に自ら飛び込む勇気が持てなかったからです。
自分たちの身にもいつか…
なんてことを考えてもどうしようもないし、
もしもの時のために備えをしても、
どれだけ覚悟をしたとしても、
「よし、これでいつ大きな地震が来ても大丈夫!」
なんて言える日は絶対に来ない。
幼い頃、阪神淡路大震災を体験しました。
あらゆる記憶がはっきりとしていないほど幼かったのですが、
それでも地震発生時の事は今でもはっきりと、鮮明に覚えています。
体験したことのない激しい揺れ。
横並びで寝ていた私と妹の上に覆いかぶさりながら、何かを叫んでいる母。
起き上がることも何もできず、
ただ揺れが収まることを待つことしかできなかった時間。
そして揺れが収まった後に見た、家の中の有様。
高速道路の下敷きになって死んだ近所の人の話。
水道が復旧するまで、地下水を汲みに行くのは私の仕事だったこと。
幸いにも大きな被害のない地域でしたが、
あの時感じた揺れと恐怖、非日常な日々は、はっきりと私の中に残っています。
その記憶で十分…
今さら、わざわざ怖いものを観なくても…。
そんな迷いがありました。
だけど観終わった今、
この作品を観てよかったと思っています。
そして、たくさんの人に知ってもらいたい作品だと思いました。
全11話です。
● ストーリー
未来の事なんてわからない。
共働きで忙しくしていて、
口を開けば小言ばかりの両親。
家族、自己中心的な人たち…
いろんなことにイライラが募る日々。
夏休み、弟の悠貴(ゆうき)に付き添って、
お台場のロボット展にやってきた小野沢未来(おのざわ みらい)。
「いっそのこと、こんな世界、壊れちゃえばいいのに。」
何気なくそうつぶやいた瞬間、その地震はやってきた。
東京を襲ったマグニチュード8.0の地震。
これは、
大きな震災を体験したことがない人ほど見てほしい作品です。
そしてこんな現実に、
いつか直面するかもしれないイメージを持っておくべきだと思います。
この作品で描かれていることは、
決して大げさなことではないから。
むしろ現実はもっとひどいと思うから。
主人公の未来が常にイライラしていて、
元気づけようとしてくれる悠貴にさえ当たり散らすのは、
観ていて気分がよくありませんが、
そこに目をつぶることができれば、
ストーリーの構成は素晴らしい。
地震発生、
お台場から世田谷の自宅へ歩いて戻る道中、
家族の安否に募る不安、
そして自宅に到着…。
こういうアニメを、本気で作ろうとする意欲が素晴らしい。
国家認定のアニメにするべきだ!
11話 {netabare} 家族との再会と、悠貴の死と、悲しさを乗り越えようとする未来の姿 {/netabare}には大泣きでした(´;ω;`)
● キャラクター
中学1年生の女の子、未来。
いろんなことに不安が募って、
毎日がイライラ。
それは等身大な中学生の姿だと思います。
だけど、ちょっと性格が歪んているのが難点。笑
弟の悠貴(小学3年生)は、
とてもいい子なのにな…。
だけど、この震災を通して、
一番心が成長するのは彼女です。
観ていてイライラする子ではありますが、
この作品の主人公としてはふさわしい子だとも思います。
偶然未来と悠貴と知り合い、
途中まで一緒に帰ることになった、マリさん。
自分の娘と母の事も心配でたまらないはずなのに、
2人の事を放っておけず、あれこれ面倒を見てくれるなんとも優しい人です。
自分がマリさんの立場だったら、
ここまでできる自信が私にはない…(;´Д`)
マリさんと出会えたことが、
2人にとって最大の幸運だったと言えるでしょう。
● 音楽
【 OP「キミノウタ」/ abingdon boys school 】
abingdon boys schoolは、
西川貴教さんがボーカルを務めるバンド。
曲もかっこいいですが、
何よりも私が衝撃を受けたのは、映像ですね。
OPで流れるのは、震災後、倒壊した東京各地の様子。
写真やテレビで見たことある有名な観光地も、
震災にあうとこうなるのかも…
というリアルな映像が、
とても衝撃的でした。
いつもOPもEDも必ず観ますが、
あまりにもOPの映像がリアルで怖くて、
とばしたくなってしまったほどです。
この映像だけでも観る価値ありですね。
【 ED「M/elody」/ 辻詩音 】
この曲単体でも、
十分いい曲です。
この作品を最終話まで観たなら、
より魅力が増します。
明るい曲調には、
未来を信じて、というメッセージが込められているような気が…。
● まとめ
「もしも大きな地震が起こったら」というテーマを、
見事に描き切ったと思います。
恐怖、不安、不便さ、心配、我慢、
家族への想い、辛い別れ、辛い想いを抱える人々…。
今ある当たり前の生活は、簡単に壊れてしまうかもしれないこと。
今ある当たり前の生活が、とても幸せで恵まれたものであること。
それを忘れてはいけないですね。
傍にいる人の大切さに気づけなかった後悔が生まれないように。
もっと多くの人に観てもらいたいと思う作品でした。