どらむろ さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ファンシーだけど風刺が効いた、経済・ビジネスの寓話風ショートコメディー。子ども向けっぽいけど、侮れない!?
LINEの箱庭育成ゲームが原作の、5分×全12話のロードムービー形式のショートコメディーです。
ファンシーでコミカルなキャラやノリ…からの、「経済」や「ビジネス」「社会システム」について学べたり、考えさせてくれる感じ。
コメディーとしても面白い上に、社会風刺アニメとして、結構侮れないです。
(同時期のホラーショートの闇図鑑より、ある意味こっちの方が怖い!)
…5話の共産主義風刺回は必見。コワイ!
本当のメインテーマは「幸福って何だろう?」だと思う。
あにこれの採点システム上総合点低目になってしまうけれど、お話はかなり面白かったです。
(実質、4点級の良作)
{netabare}『物語』
アキンド星の王子ペソが、父王から無駄遣いを叱られ「商いとお金について勉強してこい!」(実は王様もシュセンドに取り憑かれてる)と星を追い出され、お世話役2人と一緒に、いろんな星を旅して商いをするのだった…
1話完結のロードムービー、各話ごとに経済や社会システムを寓話に変換したようなファンシーな世界観や雰囲気の中で、ペソ(まいどー!としか喋らない)が商いのアイディアを閃き(まいどー♪)…それによって、その星の社会が激変してしまう…
毎度ハッピーエンドではなく、むしろバットエンドが多く、ペソが持ち込んだ新たな経済モデルによって、その星の社会システムが破綻していく様が、結構シャレにならないブラックさ!
毎話、(ペソたちが去った後、どう考えても星滅びるだろ!)な後味の悪いラスト多いです。
まいどテーマが分かり易いけれど、一方で一筋縄ではいかぬ経済の難しさも考えさせられる。
2話のポンコツ星で、ワザと壊れやすい車売ってボロ儲けするビジネスモデル横行→ペソ「まいどー!(新商売閃く)」→壊れない車販売→ポンコツ星人のビジネス破綻、めでたしめでたし?
…しかし、消費財が壊れないという事は…?
ポンコツ星人とペソ、どっちのビジネスが良かったのだろうか?
当然ペソの方が善だと思われるけれど?そうとも言い切れぬ不穏さを残して去る辺りが本作の黒いところ…
5話の共産主義への痛烈な風刺は、特に分かり易い。
「平等」なユートピアを維持する為には、独裁と思想統制が不可欠なのだ!市民、あなたは平等で幸福ですか?…はいモアイ様、私は平等です!コワイ!
ペソが資本主義持ち込んだ途端に破綻していく、実に分かり易い。
でも元の木阿弥…完璧なる独裁さえあれば、共産主義可能とも取れる、黒いラストでした。
では本作は資本主義賛美かといえば、否。
むしろ資本主義の経済モデルの矛盾や限界を風刺した回の方が多いです。
…全般に「幸福の源泉とは?」「財の価値の根拠とは?」を寓話で分かり易く考えさせられるお話が多し。
本作は経済だけではなく、もっと哲学的な「幸福とは何か?」を問うている気がします。
宇宙一幸せなシアワセ星人が、ペソから「不幸を売られて逆に喜ぶ」とか、行き過ぎたオンリーワン至上主義とか、寓話風に極端に誇張された星々を見て(これでいいのか…?)と。
一番印象的だった、既に滅んでいて、笑うと金落として成仏するユーレー星の話は非常に切ない。
作中で明確な答えは出ず、ペソ一行が星を荒らして去っていく短編の連続なんですが、通して観ると、経済や社会システムの観点から、幸福の在り方について、漠然とながらもバランス良く考えさせられるきっかけになる。
お金や材はそれ自体、善でも悪でもない。
大切なのは、どういう価値観で幸福に生きるか、なのかも?
…と色々と書きましたが、アニメはファンシーなコメディーで、風刺が黒いけれど普通に楽しいです。
「まいどー!」なペソ見てるだけでも楽しい、良いショートアニメでした。
分かり易いので子ども向け教育アニメに良さそうな一方で、ある程度、経済をかじってた方が、より面白味が分かりそう。
本気で楽しもうとすると深い、侮れないです。
…ラスト、少年漫画の王道展開で良い話風になってますが、散々星荒らしてきたのにw
最終話は総括としてはイマイチ、でも笑えたから良いのかも。
『作画』
フルCGでファンシーな感じ。ペソかわいいです。
NHKのショート枠にありそうな感じ。
『声優』
「ばらかもん」のなるちゃんで有名な原涼子さんの「まいどー!」「まいど?」かわいい♪
江口拓也さんの口八丁も中々。
関山美沙紀さんと西前忠久さんいずれも好演ながら、役の兼業多いのは惜しい。
『音楽』
BGMが良い感じ。
『キャラ』
「まいどー!」「まいど?」「まいどぉぉぉぉ♪(新商売閃いた)」しか喋らない、ペソ王子かわいいです。
金の亡者ではなく、むしろ純粋無垢な感じ。いやむしろその方が怖い。
いったい、いくつの星を滅ぼしたんだ…
恐ろしい子!
お付きのルーブルが、まいどー!としか言わないペソの代わりに専ら解説役。
巨漢モフモフなマルクは印象薄いです。
王様は関西弁。
各星のキャラ達も基本喋らず、それがむしろ思考行動原理の分かり易さに。
ユーレイとか、モブながら中々印象的。
共産主義独裁者のモアイ様はコワイ!{/netabare}