myutan さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
緊急事態に集団の秩序を維持することの難しさ
未来(2225年)の宇宙が舞台。
政治的要素が絡んだ敵襲で命からがら逃亡する宇宙船(外洋型甲虫潜艦「黒のリヴァイアス」)に乗った子供達(約500名)の人間ドラマを中心に描いた26話。
{netabare}
1回見ただけだと、鬱展開だったなぁと思って終わるかもしれませんが、テーマを考えると深い作品なのかもしれません。
緊急事態が起きて死ぬかもしれないという状況になった際に見られそうな人間の弱さ、
一度悪化し始めた秩序を回復することの難しさ、
悩みながらも自分の思う道を進むことで後悔しないことの意義(結果は最悪になったとしても)を伝えてくれているのかもしれません。
物語は、
緊急事態(敵襲)が発生した、閉鎖的空間(宇宙船)に集団行動(子供達の共同生活)をしている子供達の人間ドラマを中心に展開。
見所は、そんな最悪な状況における子ども達の心情や行動をリアルっぽく描写しようしたところかもしれません。
色々な問題(子供達の敵襲への不安、衣食住や燃料等々)が発生し、それを対処しようと試行錯誤するリーダー。
子供達はそんなリーダーの意図を理解することはできず、
色々な要素(不平等制度、恋愛、情報操作、裏切り、リーダー能力不足等)でねたみ、不信、不満、怒りを積もらせ、人間同志の信頼関係が悪化し、最後は無秩序化(博打、売春、窃盗や暴力の横行等々)していく艦内の状況は、見たくない人間の嫌な部分を見ているようで楽しくはないです。
登場人物が多く、それぞれにストーリーがあり、
物語展開に関連してくる群像劇(opを見てその多さに驚きますw)。
大きく分けるとリヴァイアスを利用する太陽系惑星間同盟政府関係者とそれを知らないリヴァイアス乗組員。
特に、リヴァイアスの主人公昂治とその弟祐希の行動や価値観は、その背景を何となく理解できても受け入れづらい部分が多々ありました(イライラするかもw)。
でも、メインキャラの価値観と物語のテーマが密接に関連していて、リーダーになったら葛藤する主義主張を代弁しているかのよう。
主人公昂治は能力(知力と運動神経)は普通で、正論にこだわる、緊急時においては理想主義者。情報公開のあり方(パニックを抑える為に嘘をつくべきではない)、救助のあり方(人は全員助けるべき)等々言ってることは正しいんですけどね。でも、緊急時において彼の考えで子供達が救えるとも思えず説得力は無かったのかもしれません。
祐希は、能力優秀で、自己防衛には手段を問わない(ほぼ武力ですがw)、緊急時においては現実主義者。犯罪件数は減りましたし。しかし、彼の価値観を押し通すと、彼に反発する者は皆ボコボコにされてしまいそうw
そして彼らの同僚であるイクミ。彼はあることがきっかけで、最後にリーダーになりますが、兄弟二人の考えを理解できるイクミが、選択したい道(理想主義)と選択せざるをえない道(現実主義)に葛藤していく様子は、一番共感できた人物。彼を見ていると人を管理していくことの難しさが伝わってきます。
宇宙での戦闘シーンはある程度迫力ありますが、
それ以上に、こんなに宇宙船を操縦するのが大変なアニメは初めて見ましたw
それが、戦闘シーンの緊張感を増してる気がしました。
opを歌う有坂美香さんの歌唱力はすごいなぁと思って聞いていましたが、歌詞とメロディーはシリアスな物語の雰囲気を伝えてるような感じ。
{/netabare}
宇宙船が何者かに教われた時、人間の心理や行動はこうなるものなのかなぁと思いながら見てました。
ある事件に無関係ながらも、巻き込まれてしまった子供達が、逃げ場のない艦内で身体的・精神的にも、傷ついていくのを見てるだけで辛かったです。
{netabare}
物語中に出てくる正解のない課題(将来救われるかもしれない多くの命のために、現在の人の命を犠牲にして良いのか?緊急事態に個人的な理由(生きる為、大切な人を守る為)で武力は許されるか?)も少し考えさせてくれる。
自分たちの社会に密接に関連してないように見えて、
それに近い事例は実は身近で起こってるかも。
アニメは娯楽なのでそこまで考える必要はないんですけどねw
{/netabare}
見ていて楽しくはない、
シリアスな作品の好きな人向けかと思います。