岬ヶ丘 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
秀作ではあるが、なんとなくもやもや
突然の母の夜逃げによって母方の祖母が経営する旅館で住み込みの仕事をするはめになったヒロイン・松前御花。祖母であり女将のスイをはじめ、旅館で働く同年代の女の子たちや個性豊かな従業員とともに仕事に学校に恋愛に奮闘する女の子の物語。P.A.WORKSの看板作品、働く女の子シリーズの記念すべき第一作。聖地巡礼でも有名な作品の一つでもある。
お仕事アニメという看板通り、これまでのアニメではあまり馴染みのない物語や舞台設定は新鮮で、他のレビューにもあったが朝ドラと昼ドラの要素をうまくブレンドした感じのアニメっぽくないアニメというのが率直な印象。仕事に恋に、学校行事に右も左もわからないヒロインが輝きたいという思いを胸にぼんぼる(頑張るの意)というのが基本的な物語。
まず第一話がかなり突飛な展開で、一話の勢いについてこれるかで作品の評価が変わりそう。物語自体は一応筋は通っているように感じ、お仕事アニメということもあり、仕事の場面も多く描かれている。また最終回の旅館を一旦閉じるという展開も納得はいく。
たた個人的に気になったのが、各話数の物語の起伏の激しさ。シリーズ構成は岡田麿里さんで作中の重要な話数、特に御花と孝一の恋愛回、御花の家族に纏わるエピソードを中心に担当している。こういった回は作品の要なので重要なのだが、基本的に岡田節でドロドロしたりとやや重い。御花の家庭事情・親子関係は岡田さんにしか書けないような見ごたえのある濃い内容。逆にその他の話数ではそれまでの話がなかったかのようなコメディ回だったり、映画詐欺回など展開がやや突飛な印象。物語の全体的な濃さのバランスや流れをもう少し工夫してほしかったかなという気持ちもある。
キャラクターはデザイン・声優さんのお芝居を含めて全体的に素晴らしかった。ヒロインにも基本的に好感がもてるし、かわいらしい。ただメインの4人の中では近所の旅館の娘・和倉だけ登場回が少なく、キャラクターの深堀りも少なかったのでやや消化不良。基本的にあまり触れられることなく、傍観者的な印象は拭えなかった。また物語が後半に進むにつれ、女将であるスイがこの作品のもう一人のヒロインであるような印象を受けた。改めてスイがこの作品の大きな要であり、魅力的なキャラクターだと再確認。
全体的にクオリティーが高くレビューが高評価なのは納得できるが、個人的になんともいえないもやもや感が残った。おそらくドラマっぽい要素も多い作品なので、既存のアニメ的なテンプレートに当てはまらない展開に混乱してしまったのが原因なのかなと。個人的に岡田さんのお話は合う作品とそうでない作品で大きく分かれる傾向にあるのかなと感じた。
ただこの手のコンセプトの作品は嫌いではないし、事実この作品に続くお仕事シリーズも制作されているため、今後のこのような路線の作品に期待。とりあえずは現在放送中の「サクラクエスト」がどうなるか、見守りたい。