M.out さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
コミュニケーションの形。すなわち、聲の形。
個人的に評価を述べるならば、2016年のアニメ1位である。
この作品は「人と人とのコミュニケーション」を描いたものである。聲唖による言葉が聞こえない、また発せないことによって生まれる隔たり。自ら心を閉ざすことによって生まれる心の隔たり。そんな風に伝えられない思いを持つ、硝子と将也をメインに添えた物語である。
{netabare}
心を隔てることで対人関係から逃げてきた将也が、硝子と出会うところから高校生パートが始まる。始めは初々しく、おどおどしながら、「好き」が「月」に変わってしまったりしながら、友人の助けを借りて徐々に分かり合っていく様子を描く。これが中盤まで。
そして、コミュニケーションを取り始めた将也はその難しさを知っていく。繋がろうとすればこんがらがって、すれ違っていく。そして心の相対速度がmaxを迎えたとき、その切なさに人は涙する。少なくとも共感するならば、直視してはいられない。たいへん苦いのだ。
そして、終盤、本当に想いが伝わったとき、その素晴らしさに人はまた涙する。少なくとも私は泣いた。
そして将也は成長していくわけです。
氷菓のような青春の甘くないところをテーマに描いた本作だが、とんでもない傑作である。
ついでに。障害者を弱者という立場で描かず、一人の人間として描いている点がいい。特に終盤の文化祭で、将也が硝子に手を引かれるシーン。障害者が健常者を導くシーンであり感慨深い。また、植野という存在は常に硝子と対等であろうとした存在である。だから、硝子と将也以外で多く描かれたのが植野なのだろう。
{/netabare}
漫画原作とは違い、将也の視点が大きく打ち出された本作では、そぎ落とされた要素が多い。そのせいで掘り下げられないキャラも出てきたわけだが、コンパクトにまとまっていて、個人的にはこっちの方が好きだ。
あと、牛尾憲輔の音楽はやはり良い。