チョビ0314 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
仄シリーズ 焔煉烽炉耀炒爆煌燈燠燎煽燻燐燧炯燃燥燭熾烙燗
元々人気が高かった作品ですが、BLAME!の公開で今一度脚光を浴びているのが本作です。
この作品の一番の特徴と言えば、やはりフルCGで美麗な作画だと思います。
個人的な見解でありますがコンピュータグラフィックスの利点は、その緻密さと質量表現におけるリアリティで、同時に人の眼が見た印象との違いが欠点でした。
個人差はあると思うのですが、人間がコンピュータの視点で見た場合は感覚的なズレが生じます。
人が描いた絵などを見ると判りますが、どれだけ緻密に描いていても何処かに描き手の主観が入りますし、脳内イメージに拠る歪みというか独特の滲みの様な個性が出ます。
しかしコンピュータはその正確さ故に人間の感じる「揺らぎ」を表現する事が難しかった様に思えます。
ですが昨今では人間が見た時に違和感を感じさせないよう、意図的にレンダリングエンジンを使用しわざと滲ませたり、敢えて不規則な絵柄等を加えて描く事でその溝を埋めつつあります。
まだまだ不自然さは残るものの、上記の様な点でも成功した作品と言えるでしょう。
物語はかなりハードな描写も伴ったSFで、専門用語もかなり使われるから原作を見てない方には少々難解であったかもしれません。
しかしそれを補って余りある魅力を含んだストーリーを、時には緻密に時には上手に端折りながら一区切りまで見事に完走させました。
あとハーレム要素も一応はあるけど、主人公が一途に一人の女性を求め続ける上に鈍感なので、それほどあざとく感じなくて済むのが良いですね。
そんなハードSFに登場するキャラクターについても少し特殊です。
同じ人間でも多種多様なタイプが存在していて、普通(古いとも言える)の人間は薬物や機械を使い不死になり生き永らえ、その世界のノーマル人類は光合成をする事により少量の食物で身体を保てるように改良されています。
更には仄シリーズの様なクローンから身体の一部を機械化した人々、{netabare}そして主人公谷風長道の様に調整され生まれた時から不死の人間まで様々。
特に長道は主役でありながら恐らく数回死んでいます。(初回の米泥棒で頭を打った時点で死んでそうですし)
その度に蘇り戦い続けるという難儀な主人公です。{/netabare}
性別も男女に加え中性と従来の作品ではあまり見ることがない分かれ方になっています。
これらの設定が地球を追われ安住の地を探し彷徨う「播種船シドニア」の奇異な世界観とマッチし、謎めいた状況を魅力的に写しつつ状況の理解へと導いてくれました。
音楽は少し音が大きすぎると感じる場合もあったけど、許容範囲内に抑えられていたと思います。
中でも独特の効果音は素晴らしく、特殊な世界観や戦闘シーンに彩りと緊張感を加えていますね。
そういえば「幼女戦記」の飛行中の効果音はこの作品をヒントにしたのではないか、と感じてしまいました。
あと円盤では5.1chの音源になっているので臨場感がかなりUPしていますし、新アングルヴァージョンも見れますからTV版を見た人も楽しめると思いますよ。
{netabare}特に一期の最終回「帰還」の未公開のシーンは重要で、何故脱出後弦打機だけがエネルギー切れになったのかが描かれています。{/netabare}
そして忘れてはならないのが「奇居子(ガウナ)」
奇居子は弐瓶先生の幾つもの作品に登場する存在で、本作においてもシドニアを幾度も窮地に追い込みます。
更にその奇居子を包む「胞衣(エナ)」これがかなり万能で恐ろしい…武器のコピーから人間まで何でも複製する事が可能。
これにより他の作品に例を見ないヒロインが誕生しました。
{netabare}そう「胞衣星白」です。
無垢な幼子の様な振る舞いから特出して可愛く感じましたが、その分同じモデルから生まれた「紅天蛾(ベニスズメ)」の怖ろしさが相対的に引き立たされた様に感じます。{/netabare}
皆様も御存知の通り物語は二期へと続きますが、監督さんが交代するので結構演出が変わります。
そういった所を見比べてみるのも良いのではないでしょうか。
ちなみにシドニアはラジオも恐ろしく面白かったです。
タイトル「ラジオ シドニアの騎士~綾と綾音の秘密の光合成」
パーソナリティを務める洲崎綾さんと佐倉綾音さんの女子校(あまり品のよろしくない)の様な無防御トークが色んな意味でスゴいし、シドニアの裏設定等も聴けます。
更に弐瓶先生がツトム呼ばわりされて満更でもない感じの所とかもありますので、機会がありましたら聴いてみて戴きたいです。
最後にラジオで語られた裏話を…
{netabare}長道のロッカーに大量の重力米が入っているシーンがあるのですが、あれは岐神(クナト)が嫌がらせに入れた物だそうです。(いくらなんでも食いきれないだろ、って感じでしょうか){/netabare}