「VISITOR(ビジター)(TVアニメ動画)」

総合得点
計測不能
感想・評価
3
棚に入れた
17
ランキング
7907
★★★★★ 4.2 (3)
物語
4.8
作画
3.3
声優
4.8
音楽
3.8
キャラ
4.5

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ネタバレ

チョビ0314 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 4.5 作画 : 1.5 声優 : 4.5 音楽 : 2.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

史上最強の化石燃料ロケット(誤字脱字を修正しました

この作品は今では殆どの人が知らないと思います。
制作されたのは1998年。
長野オリンピックや仏ワールドカップが開催され、バブル崩壊から立ち直りIT企業が台頭し初めた位の頃で、当時はCGで描かれたムービーを売りにしたゲームが数多く発売されていた時代でもあります。
(ちなみに次世代ハード戦争での敗北を覆すべくSEGAがドリームキャストが発売…それがSEGA最後のハードとなりました(涙)

本作はそんな時代にWOWOWで放送するために作られた作品な上、まだまだセル画全盛期に全編フルCGという意欲作です。
しかしながらそのCGは初代プレステレベルで、当時見ても「しょ…しょぼい」という残念な出来です…
「人形劇の様なCGアニメ」という感じのコンセプトだったらしく、わざとそうしたみたい…なんですけど、もうちょっとどうにかならなかったのだろうか…
そういう訳で今見たら物凄~~~くショボい映像を見ないといけないので、もし見るのであれば覚悟を決めてご視聴下さい。

ただこの作品、その欠点を補ってくれる魅力があるのです。
先ずその世界観。
2099年というかなり未来の日本が主な舞台で、世界は宇宙開発競争の真っ只中。
人類は火星等にも既に到達していますが、そこへ謎の巨大な球体が飛来します。
最初に接触した艦艇が未知の物体とアクセスを試みるが応答はなく、やむを得ず攻撃を行うも逆に取り込まれ音信不通に。
という感じで「色々取り込みつつ問答無用に進んでくる対未知の物体への対抗策を模索する」というのが大まかな流れとなります。
こう書くとそんなに目新しい話じゃありませんが、この対応策の練り方が面白い。

最初は国連を中心に主要各国が宇宙艦隊を結成し出撃するも、正直手も足も出ずに壊滅。
最後の大型宇宙船を保有する日本にお鉢が回ってきます。
で、対抗策の決め方が仕事として受注したい企業同士が作成したムービーを見せ合うプレゼン対決と、いかにも平和ボケした日本式。
更に「貿易黒字だから日本が何もしないのはバツが悪い」だの「手柄だけを横取りしよう」とか悪い高官方がお決まりの料亭で密談(笑)
そのままカメラが手前に引いて行くと料亭が超高層ビルの屋上にあったりして、未来の日本感を増させていました。
他にも資金や物資の調達や運搬に様々な制約があり、色々な所へ根回して許可を取らないと何も出来ない等、かなり独特なリアリティを感じます。

登場するキャラクター達も日本的で、主役の派遣会社の有能なOLさん達、脇を固める昼行灯だけど切れ者の上司。
そして無茶しまくりで跳ねっ返りの報道屋、変わり者の学者等の色々な才能が集まり民間での対策を模索します
更に暗躍するライバル企業の人間や、国の利益を最優先するキャリア官僚等、有能だがクセの強い人達も登場してストーリーに華を添えます。
ちなみに脚本担当は伊藤和典氏。
以下ウィキペディアより引用
「キャラクターデザインのイメージは脚本化の伊藤和典からの指示は、『機動警察パトレイバー』の登場人物に例えて、柊美佳は香貫花・クランシー、望月リラは泉野明というものだった。」

確かになにやらパトレイバーっぽい魅力を感じました。

それから各キャストもなかなか魅力的な方々で固められてます。
中でも主人公「柊 美佳」役の三石琴乃さんがハマってて、某NERV戦闘指揮官ばりに格好良い。
他にも脇役がベテランで渋い方が声を当てており、日本についてかなり言い得て妙な台詞が多々出てきますから、当時色々考えさせられたのを憶えています。

あと宇宙空間の演出もなかなか良いです。
人物こそ人形劇レベルですけど、角ばった宇宙船とか構造物等の表現はそれなりの出来、というかCGの利点を活かせたのでしょう。
特に面白いのが、最初の方の多国籍宇宙艦隊の戦いがTVの特番になり、その編集作業を行うシーンがあるんですが

カメラマン「ここ音入れていいんすか?」
ディレクター「は、なんでだよ?」
カメラマン「だって真空の宇宙で音があるって変じゃないですか」
ディレクター「だからお前はダメなんだよ、音を入ねぇと盛り上がらねぇし見てる側に伝わらねぇだろ」

という感じのやり取りが行われます。
(古い作品なので台詞が正しいか記憶は曖昧です。すみません)
これって当たり前の事だけど、ほとんどの作品で何故普通に音が入ってるかをサラっと説明してくれるんですよ。
真空へは音が通らないが船内や構造物には建材を伝わり音が響くとか、当たり前の現象にリアリティを感じて見れる様に上手く誘導していました。
その後宇宙空間での「音」の存在を意識して視聴する事が出来るようになるので、他の作品を見る時に楽しみ方が一つ増えます。
それから反物質、レールガン、宇宙ステーション、果てはサターンロケット迄と様々な物が登場しますので、そういった点でも楽しめるかと思います。

音響という点においては、BGMは普通ですし効果音は上記の理由などから基本的にかなり地味です。
しかしそれが本作にはとても似合っている様に感じました。

このVISITORはCGこそアレだけど、良く考えられた技術考証と設定から生まれたストーリーに、技術立国且つ経済大国である日本独特の決まり事というスパイスを混ぜ込んで仕上げた、非常に魅力のある作品であると考えています。
パトレイバーとか攻殻機動隊が好きな人なら、かなり楽しめる作品だと思いますので、機会がありましたら是非ご覧になって戴きたいです。

最後に大好きなシーンだけど一応伏せます。
{netabare}終盤で聴く事が出来る柊 美佳の「納期が遅れた位でオタオタしない!クライアントは全人類(人口だったかな?)よ!」という感じの台詞は、SFの中に現代に通ずるリアリティを感じさせてくれて実にシビレました。{/netabare}

投稿 : 2017/06/06
閲覧 : 298
サンキュー:

6

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