しゅりー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
2003年のオーパーツ ~良き風とともに~
2011年~2012年現在、続編の「銀翼のファム」が放送している本作。
続編の視聴だけでは勿体ないと思い、秋から少しずつ視聴していました。
ヴァンシップという小型飛行艇に乗り、手紙などの運び屋をしていた
少年クラウスと少女ラヴィ、そしてとある事件から彼等と共に歩む
少女アルを中心に描かれる全26話の群像劇です。
物語が進むにつれて彼等の生活する世界の実像、争いが描写されていきます。
このアニメが放送されていた2003年春から秋。
私は夕方枠のガンダムSEEDと深夜枠のガドガードの2作だけ
追いかけるので精一杯でラストエグザイルは
後でDVDのCMを見た知識しかありませんでした。
後はGWに観た劇場版ラーゼフォンが印象深いくらいの時期です。
そうして当時を思い出しながら本作を視聴して驚いたのは
本当に8年前のアニメなのかと疑う程、映像としてのレベルが高いことです。
ビックリするくらいCGとアニメの混ざり合うバランスが良いのです。
当時のTVアニメはCGとアニメに違和感があることが当たり前のように見せていたので、
本作のCGの自然な魅せ方は同時期の作品に抜きん出たセンスを持っていたと思います。
何より2クールの間、極端な崩壊を見せなかったらしいことが凄まじいです。
ハイセンスなアニメと違和感のないOP、沖野俊太郎さんの「Cloud Age Symphony」
毎度続きが気になるところで、ふっと空から羽が舞い降りて
落ち着きを取り戻してくれるED、黒石ひとみさんの「Over The Sky」
そしてスチームパンク風の世界観に良く馴染むアコースティックな
BGMの数々と耳にも嬉しいアニメです。
物語のほうは人物が多すぎて把握が難しい、設定の提示に不徹底な点がある、
最終回あたりの話が詰め込みすぎなどの不評を視聴前に良く目にしました。
実際それは事実だと思いますし、少し勿体無いところがある気はします。
しかし、良かったと思えるところもかなりあります。
例えばクラウス、ラビィ、アレックス、タチアナ、モラン、ディーオなどなど
様々なキャラクターの視点を交互に、印象的に描いてあること。
それぞれの視点から世界全体で起きている出来事を徐々に見せられ、
考えさせられることで、最終回の視聴が終わった時に穴だらけだったパズルに
ピースが全てはめ込まれて、一つの絵画が完成したような爽快感がありました。
世界の全体像を暗示しつつも、最後まで隠し続けた構成には
執念のような物を感じます。
キャラクターそれぞれの描写も物語全体の流れに花を添えるような形で
少しずつ成長や決意が描かれていて好感が持てます。
この点については普通ならもっと地味で名前も設定されないような
役所のキャラクターにもしっかりメインキャラクターと関わるシーンが
あったために自然に観ていられたように思いました。
さて、気付いたら長々とレビューを書いてしまいました。
なかなか見応えがあったので、色々と言葉に出来ないことが
たくさん残る印象があるアニメです。
青い空を舞台に渋いメカが軽やかに、または重々しく活躍する様や、
個性的なキャラクターの魅せる群像劇が好きな方にオススメしたいです。
もしこれからの視聴を考えていらっしゃる方がいらっしゃったら
情報量が多いので、視聴時に「?」となったところは邪道な気もしますが
Wikiなどを活用して情報を補完することも一つの道かもしれません。
あとDVDレンタルは1巻2話ごとなのでちょっと面倒くさいかもしれませんね…。