ちゃろう さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
日常を切り取った作品ではなく青春を切り取った作品です。
1期と2期をまとめた評価です。
いわゆる日常系のアニメに分類されるものですが、細かく言うなら日常学園青春ものになると思います。
学園青春ものの特徴として感情移入がしやすいところにあると思います。語弊がある言い方かもしれませんが、簡単に感動をさせやすいんですね。それは学校生活は誰しもが経験している事でイベントや行事など「あるある」な経験になりますし多くの人が「もっと青春を謳歌したかった」だとか「あの頃に戻りたい」という気持ちを持っているからだと思います。
イベントや行事ごとも話を盛り上げやすいことだし何よりも最大の感動イベントの卒業式があるからです。
もちろんだからと言ってどんな青春ものの作品でもこういう感情移入や感動を与えられるかと言えばそうでもありません。そこまで感情移入ができない作品やそこまで感動することなく終わった作品も多いです。
そんな中でもこの作品はしっかりとノスタルジックな気持ちにさせてくれるし「あのころに戻りたい」、「あんな青春をしたかった」と思わせてくれました。
その理由として風景描写がすごく絶妙なんですよね。明るい風景と暗めの風景のバランスがすごくいい。それに加えて光の差し込み方と夕方のシーンの使い方が本当に巧みだと思います。結構夕方とか夜のシーンが多めなんですよね。それがノスタルジックな部分を強調していると思います。祭りの後の独特の雰囲気だったり、クリスマスの特別な空気感だったり…そういうのに近い空気を与えてくれます。
ただ明るいだけでは感傷に浸ることは難しいですし、ただ暗めにするだけでは伝説のみなみけ2期のようなカオスになってしまう。この辺の風景描写の絶妙な使い方が作品の質を高めてくれていると思います。
あとはしっかりと時間が進むことですね。1期からだと高校1年生から始まり高校3年の卒業までキレイに進んできれいに完結しています。そして日常部分よりも行事やイベントを時には1話で終わらずしっかりと織り込んでいます。
そして何よりも卒業式で終わらせたことが本当に重要です(番外編はありますが)卒業式を見せるのと見せないことでは感動に雲泥の差があると思います。
ちょっとうまく言えませんが卒業式を行うことが今までのイベントや行事や高校生活が「日常」から「青春」に変わる瞬間であり、この作品の評価を高めてくれたといっても過言ではないと思います。そういう意味でも卒業のない1期だけを見るとそれこそ「日常を切り取った作品」でありの物語の評価は3です。そしてきちんと卒業をして今までの「日常」を「青春」に昇華させた2期は4.5です。間をとって物語の評価は4にしています。
楽しい思い出が多ければ多いほど死んだときの感動が大きいラブストーリーのヒロインの様に、楽しい思い出が多ければ多いほど卒業式の感動が多いのは現実世界でも変わらない鉄板の感動要因ですね。それほどきちんと卒業式をして終わらせたことは意味があることだと思います。
キャラの造形もいいですね。日常系なのに非現実的な髪の色だったり、いかにもな性格のキャラがいない、いわゆる等身大のキャラクターがいい。紬ちゃんが金髪だったりするのはまぁ許容範囲でしょう。意外とヤンキーなのかもしれませんねw
もちろんご都合主義的な設定はあります。紬ちゃんがとってつけたようなお金持ちだったり、唯ちゃんのチート性能だったりとか…でもそれも許容範囲でしょう。軽いあざとさも多少はありますがそれもやりすぎではない。
これが安易なキャラ作りのために奇抜な造形にしたり、こってこてのあざとい性格のキャラにしてしまったらここまで感情移入はできなかったです。
そういう変化級的、飛び道具的なキャラ作りをしなくても十分個性的であり魅力的なキャラは本当に素晴らしいと思います。
作画もきれいですね。動きがある作品ではないのですが前述したとおり風景描写がとても巧みです。さすがの京アニクオリティだと思います。
以上の様にこの作品の最大の魅力はあんな青春をしたかった、あの頃に戻りたいと思わせてくれるところであり、そういう意味ではリアルな学生生活を送っている高校生以下の人よりも大学生以上の人、特にアラサー以上の人の方が魅力を感じる作品だと思います。
みんなで仲良くまったりしたり、遊びに行ったり、悩んだり、青春したり…そしてそのまま卒業する…私もこんな青春を送りたかったですね。本当にそう思います。