狗が身 さんの感想・評価
3.1
物語 : 1.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
もはやホラーだよ…。
アニメーションの原点である手描きの良さを今一度!
という宮崎駿氏の熱意によって生み出されたのが本作。コンセプトがコンセプトなので、アニメーション映像は圧巻の一言。
…しかし、その代償はあまりに大きすぎた。駿氏自身も発言しているけど、本作のストーリーはテンポと勢いを重視しているそうなので、中身の出来は悲惨なことになっている。正直、アニメーションの凄さを加味したとしても、もう一度観たいとは到底思わない。
本作の物語の発端は、ポニョが地上に家出してきたことから始まる。
そこで出会った宗介に心惹かれ、運良く人間の姿になれたことで世界の理が歪んでしまい、地球規模の危機が訪れてしまうという、割とかなり深刻な展開を迎えていく。
なのにこの登場人物達…というか監督の意図的な演出なのかもしれないけど、とにかく緊張感がなさ過ぎる。
地球規模の危機という事実を知っているのはフジモトとグランマンマーレだけだとしても、町のほとんどが海に沈んでいて、しかも海の中には見たことのない魚がうようよ泳いでるんだよ?
そんな状況からは考えられないぐらい暢気なんだよ。逆に正気を疑いたくなるぐらい普通。宗介と女の子一人をそのまま見送るって、どうかしてるよ…。まあその前から見た目人面魚だった頃のポニョを見てもトキさん以外誰一人異常に思ってなかったような人たちだもんな…。
で、世界の危機を食い止める方法は二つ。
一つはポニョが海の世界に帰ること。
そしてもう一つは、ポニョが人間になること。
ポニョの母はフジモトに後者を提案するが、しかし、その為にはポニョに対する宗介の真摯な想いが必要であり、もしその条件が満たされなければポニョは泡になってしまうという…。
そんなハイリスク&ハイリターンな方法を当人達を差し置いて決めてしまうグランマンマーレも大概の非常識神。まあ人じゃなくて神だから価値観が違うってことで納得できないこともないけど…。
で、その試練の内容はというとグランマンマーレの質問に宗介がポニョへの気持ちを答えるというだけ。
……え、それってグランマンマーレが宗介を迎えに行って訊くだけじゃ駄目だったの?(困惑)
リサを探す宗介とポニのちょっとした冒険はなんだったの?
これだけでいいならフジモトの奔走はなんだったのか…。とは言っても、そのフジモトも当初はかつて人間の身でありながら人間に失望して海の眷属になった魔法使いで、人間の世界を終わらせて海の世界の復活を目論む存在だったんだよなー。
だったらいっそのこと、フジモトを試練の対象にすればよかったんじゃないの?
人間に失望するフジモトに、宗介とポニョをぶつければドラマ的にもストーリー的にもグッと良くなっただろうに。
なんでも、駿氏は「型どおりの起承転結ばかり作っていると、単調になってつまらなくなってしまう」的なことを言っていて、それで今回のような構成になったのかもしれないけど、正直こんな内容になるなら型どおりでも起承転結をしっかり設けた方が遙かに面白くなったはず。
宗介とポニョ。二人のキャラクター性はしっかり楽しませてもらったけど、それ以外はなぁ…。