狗が身 さんの感想・評価
3.2
物語 : 1.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
……イ、イイハナシナノカナー。
敢えて言いましょう。ストーリーの出来だけならば、かの悪名高き『ゲド戦記』未満の作品だと思う。(テーマ的にゲド戦記の方が僕好みだという点を差し引いても)
大雑把に説明すると、心が老いてる少女と心の未熟な青年が共同生活の中で愛を育んでいって、丁度良い感じになる、というお話。そこに【家族】というテーマ性を盛り込んでいる。
しかし、世界観に惹かれる要素がこれといってない上に説明不足が目立ち、肝心のストーリーはやっつけ感が酷い有様。
ハウル達にとって障害となった戦争だが、そもそもどういう理由で戦争状態に陥っているのかという説明はなく、両国の描写もほとんど描かれていない。そして終盤では王室の魔法使いサリマンの「この馬鹿げた戦争を終わらせましょう」の鶴の一言であっさり終わっちゃった。
カブの正体を最後に出すくらいなら、途中で行方不明の王子の捜索をしてる隣国の様子ぐらい描けなかったのかな…?
ハウルとソフィーのロマンスに、よりドラマ性をもたせる為の舞台装置であるということは分かるのだけど、それにしたって舞台セットが雑すぎやしないだろうか?
サリマンが執拗にハウルを狙っていたのだから、例えばハウルがなにかしら戦争に関わる重要な存在となっているのかと思っていたのだけど、そんなこともなかったし…。
ソフィーがハウルの心臓を元に戻すシーンにしても、置いてきぼりを食らってしまって、全然スッキリしなかった。
実は原作ではソフィーは言霊の魔法使いという設定があるらしく、心臓を返すシーンの「ソフィーなら大丈夫だと思うよ」というカルシファーのセリフもそのことを指していたっぽいのだけど、当然のようにそこら辺の説明も無し。なんでや。
一途で献身的なソフィーの姿と、彼女の思いによって守りたい家族を得たハウルという二人のドラマは確かに悪くなかった。
セリフから察するに幼少の頃から一人ぼっちだったらしきハウルが寂しさを埋める為に、そしてカルシファーは死を逃れる為に生死を共にする契約を交わした。(カルシファーと同じく空から降っていた光が地面に落ちてから消えたところから察するに、あのままだとカルシファーもすぐに死んじゃうんだろう)
ハウルが責任から逃れて自由に転々としていたのは、弱虫という性根もさることながら、守りたいものが無かったからなのかもしれない。
しかし、二人のドラマの良さを考慮しても、決して良作とは言えない。ハウルの描写自体もかなり薄いし。
ハウルの城以外に描きたいものがなかったんじゃないのか。そんな邪推さえしまう。