チョビ0314 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
重力子放射線射出装置は漢の浪漫
先日視聴しましたが、フルCGの映画として相当のレベルに達している作品に仕上がっていました。
弐瓶勉先生の作品は「シドニアの騎士」で証明された通りCG化に適している作風です。
それ故この作品は後発な分否応なしに期待度のハードルを上げてしまったけど、その期待を裏切らず予想以上の完成度でとても楽しめました。
弐瓶先生の独特の世界観を見事に再現しつつ、シドニアとは違う緊張感を構築し一気に作品の中に引き込みます。
その手法の一つに計算された視覚効果があるようです。
{netabare} まず冒頭のシーンで人間がムリをして食料を探索するのですが、敵に見つかり逃走します。{/netabare}
そのシーンの表現方法が視覚データを画面いっぱいに映し出し、人が走っている感じを再現してかなり大きく画面が揺れますが、その表現を短めにして俗にいう3D酔いを起こさせないようにしていたみたいでした。
この後は無理に視覚画面にして揺する演出をせず、画面自体を負担の掛からないであろう範囲で揺らす事で、今どうなっているのかを感覚的に理解できるように視聴者を導いてくれます。
CGの場合画面の転換は容易なのでダイナミックに動かしたくなると思いますが、そこを視聴者が疲れない様に抑える事により見易さを増させていると感じました。
また敵となる管理者側の表現方法も良かったです。
能面の様なメカが人には不可能な動きで追いかけてくる様は、かなりの気持ち悪さを感じさせてくれ、同時に人間は滅亡の瀬戸際であると自然に理解出来ました。
それから映像の方向性もバッチリです。
例えば右から走ってきた人間が次のシーンでは振り向きもせず逆方向に走ってしまうと、映像に整合性がなくなり見ている側に違和感を覚えさせますが、そういう不合理もなかったと思います。
派手に動かしたいあまり、こういう法則を無視している作品がたまにあるけど、そういう違和感に気がつくともう見たくない感じになっちゃう様な…。
絶望的な世界をよく表現した音楽はなかなかです。
やたらと音を入れるのではなく、抑えめな効果音と音楽の挿入により台詞を邪魔しない感じです。
もちろん活動的な場面では、それに応じた音を適度な音量で配置してくれるので迫力を保っていたと思います。
あとは地味にギャグがあるけど、「え…今のはヒドい(笑)」という感じで独特な雰囲気の邪魔にならない程度で心地よかったです。
演者さんがちゃんと作風に合わせ演技をなさってくれたので、特に違和感なく聴いていられました。
もちろん制限時間のある映像化だから原作との相違点もあるけど、気になる様な改変ではなく楽しめました。
{netabare} そういえば主人公「霧亥(きりい)」が管理者の機能を誤魔化す事が出来る装置を首に付けています。
この装置は仕様に際して青く発光しまして、菊地秀行氏の小説「ヴァンパイアハンターD」の主人公が似たような効果を伴うネックレスを付けていたのを思い出しました。
もしDを参考にしていたのならファンとして嬉しいです(笑){/netabare}
ストーリーや演出、CGの技術もかなり高レベルに作られている作品で、SFファンでなくても十分に楽しめる作品だと思います。
今現在で最先端の映像作品の一つともいえる映画なので、多くの方にご覧になって欲しいです。