狗が身 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
元気を与えてくれます。
若干13歳である少女キキが魔女のしきたりに従って上京するところから物語は始まる。
この上京は、キキが魔女になることを決意したことを意味する。決して遊びではなくて、立派な魔女になる為の社会勉強なのだ。キキはそう思いこもうとしていた。
キキは魔女のしきたりを古いものだと思ってるけど、根の素直さゆえに、一所懸命に街に奉仕活動に励んでいく。
でも心の奥では、ラジオで聴いていた都会への憧れをずっと燻らせている。
お洒落な服を着て、素敵な恋に落ちてみたい。そういう思いが、トンボや歳の近い少年少女への嫉妬として表れちゃうんだよね。
ついにその思いを騙しきれなくなって、魔女の力が弱まってしまう。魔女にならなければ、普通の女の子として生きていけるかもしれない…。きっと、そんな気持ちが無意識下にあったに違いない。
だけどそんな彼女を救ったのは家族ではなく、他でもない、彼女が魔女として活動していくうちに繋がった人たちだったんだ。キキのドラマに親が出てこなかった。これが何気に凄いところだね。
おソノさん、ウルスラさん、老婦人。自分が関わった人たちと話すうちに、自分がやってきたことがどれだけ素敵なことなのか。疲れ、迷っていたキキの心に、それは大きく、深い実感として満ちたことだろう。
自分が魔女としてやってきたことが、彼女の自信に繋がる。そうしてキキは再び飛べたんだ。
自分が住み、働いている場所を「好き」と言える。それって素敵なことだよな~…。
スタッフロールでは嫉妬の対象だった街の女の子とも普通に会話しているシーンからも、キキの成長っぷりが大変微笑ましかったね。
ただ欲を言わせてもらうと、ジジと再び言葉を交わせたのかが曖昧なままなのが残念な点かな。
一応ジジとの会話は元々キキの魔法によって成立していたことでジジ自体がしゃべれる猫ではないから、スタッフロールでキキが普通に飛行していることからも魔法は元に戻っただろうし、再び話せるようになってるんだと想像できる。
でも観る人によっては「ジジと話せなくなったのはキキが成長した証なんだ」と勘違いする人が出てきてしまいそうで心配。
ジジと会話できなくなったのは単純にキキが魔女という血筋に嫌気が差したからであって、言うなればただのスランプ。これは否定されるべき要素ではないんだ。
むしろキキが再びジジと話せるようになることこそ、キキの成長を視聴者に印象づける一番のシーンと言ってもいいかもしれない。そこが抜けてしまっているのが非常に残念だった…。(キキが本当の意味で魔女になることを決めたことの証明になるから)
それ以外は不満点のない、楽しくて元気のもらえる良作だと思う。