雀犬 さんの感想・評価

3.5
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態：観終わった

前を向いて生きる

知り合いに鍵っ子がいまして、最近アニメを見始めたと言うと
「CLANNADはいいぞ」と本作を推薦いただきました。
これが布教活動か！

今年の冬休みから見始めたんだけど
ASと番外編含めて見終わるのに半年近くかかってしまった。
全部で50話近くとボリュームもあるんですが、
一番難儀したのはやはりキャラデザ。
ゲームと比べて微修正されているようですが
クラナド坂を上るにあたって最大の障壁になったのは間違いない。
顔のパーツの配置がおかしくないかｗ
他の方の感想を見ても苦手というコメントがめちゃくちゃ多い。
とにかくこの「いたる絵」を克服しないことには先に進めない。

CLANNADはキャラだけなく、音楽、ストーリー、ギャグ、
それぞれ独特の雰囲気があります。
音楽はいかにもゲームっぽい。主張が強すぎるように感じる時がありました。
ストーリーは学園物なのにメルヘンチック、ギャグのノリは少年漫画に近い。
全体的に子供っぽくて僕には若干しんどかった。

全年齢対象の恋愛アドベンチャーゲームとはどういう位置づけなのか。
18歳未満の人にもプレイしてもらって気に入ってもらえれば、
ゆくゆくは18禁のゲームも購入してもらえる。
そう考えるとティーンズ向けのストーリーになるのが自然なのだろう。

ただし内容は家族愛の素晴らしさを恥じることなく見る者に訴えかけるものであり、
それを幼稚だと切り捨てるわけにはいかないし、印象に残る場面がいくつかあったのも事実です。

以下詳細な感想。
{netabare}
最初にスタートするのが風子編。
風子の言動が作品の子供っぽさに拍車をかける。
個人的には風子編がクラナド坂で一番の急勾配。見ていて疲れる。
クリアするのに3ヶ月もかかってしまった。
この話は明らかに現実では起こりえないことが起こります。
CLANNADが御伽話であることを理解する。つまり、
むかしむかしあるところに岡崎朋也という少年がおったそうな…
という性質の物語であり、「ありえない」「リアリティーがない」
といった類の指摘は御法度だということか。

次のことみ編もいい話ではあるんだけど、感動まではいかない。
女の子に纏わるエピソードを見るまでの過程が
ヒトデを彫る、庭の草むしりをする、運動部員にスポーツ勝負を挑む、
と突飛なもので、いまひとつ話に入り込めない。

美少女ゲーム原作だけあっていっぱい女の子は出てくる。
でもどのキャラにもあまり興味が持てなくて、感情移入するのが非常に難しかった。
ぶっちゃけ、いたる絵でなければ感想は違ったかもしれない。

智代編は生徒会長になったら通学路の桜並木を残すんだと明かしたところで終わる。
この先に踏み込むと渚のメインストーリーとの統合が難しくなるらしい。
それにしても、風子編は姉への想い、ことみ編は娘への想い、智代は弟への想いと
ひたすら家族愛のオンパレード。そしてED曲はだんご大家族。
ここまで見せつけられると、あまり面白くないなぁと思って見ている僕も根負けしてきました。
このアニメ見て何も感じないのは自分の心が荒んでいるんじゃないかと軽く自己嫌悪になってしまう。

後半から女性陣は朋也への好意を隠さないようになり、モテモテ状態になる。
ここから渚と付き合うまでの展開はとても良かった。
朋也と渚がメインになってから一気に見やすくなる。
感情移入できるキャラが朋也だけだから当然か。

ハーレムモードはテニスボールが渚に当たり、朋也が保健室に連れていく事で決着する。
このシーンは非常にうまい。
心配で駆け付けたテニス部員の手を払いのけて必死になる様子は、
傍から見てあまり感じの良いものではないし、
これまでの朋也の行動からするとらしくない気もする。
だけどもこの違和感こそが、朋也が渚に恋をしていることを悟らせる。
もうそれだけで十分だった。
たった一手で女性陣全員を諦めさせる、名演出でした。

そして最終話の告白シーン。これは文句なしに良かった。
親公認で恋人同然だった二人が、正式にお付き合いしましょうという
形式的なものとは全く違う。
ハーレムラブコメのように他の女の子達に気があって躊躇していたわけでもない。
アニメ版では恋愛対象としてみていたのは最初から渚だけです。

家庭は崩壊し、怪我でバスケもできなくなった朋也は
学校をサボりがちになり自堕落な生活を送ってきた。
そんな自分に付き合う資格があるのかという葛藤があった。

この告白は"これからは前を向いて生きる"という彼の決意表明になっている。
それを台詞もモノローグも使わず、細部の積み重ねで表現しているところが美しいと思う。
我慢しながらここまで見てきて良かったと思える瞬間でした。
{/netabare}

この感想は無印のみでの評価。
CLANNADはAfter Storyからが本番だとよく言われる。僕もそう思う。
After Storyのレビューに続く。