oxPGx85958 さんの感想・評価
2.0
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 1.5
音楽 : 3.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
大傑作になるか -> 一粒で二度美味しいとはならなかった
7/2に追記
総監督のこんなインタビューを見つけました。
http://anime.eiga.com/news/103080/
第1稿はもっとひどかった。俺が何度もダメ出しをしたおかげでずいぶんまともになったんだ、という趣旨だけど、「綿密なやり取りを重ねたおかげで、視聴者のみなさんの予想を裏切り、なおかつ期待に応えられる脚本になっていると思います」と言われたら困ってしまいます。
ただ個人的には、ここで言っている「期待」については、私はあまりこだわりません。予想外の展開は本質的に良いことだと思うし、ネット上でよく見かける{netabare}同性愛だとか16年の飼育だとかセーラー服だとか機械仕掛けの神{/netabare}といった仕掛けも、それ自体はそんなに気にならない。
気になるのはSFマインドとSF的教養の不足です。基本的なところで、各エピソードのサブタイトルを示す異方の文字。あれが日本語の50音とほぼ1対1に規則的に対応していることの理由は説明する必要がある。もちろんそれ以前に、異方の存在のコミュニケーション方法はどんなものかという本質的な問題があるんだけど、そこには目をつぶるとしても、なんで日本語のカタカナに1対1変換できる体系があるのか、なんで異方の名前をカタカナ外来語みたいな発音で表現できるのか。日本語圏以外ではヤハクィザシュニナをどう発音しているのか。
これをもうちょっと広げて、カドが出現したのが現代の日本だったことは単なる偶然だったのか、何らかの必然だったのか。物語終盤には単なる偶然ではないことを示唆する展開がありますが、具体的な説明はついに提示されませんでした。
でまあ、こうやってシリーズが終わって、いろいろと関連情報を見ていくなかで思ったのは、「この人たち何も考えていなかったんだろうな」ということでした。「ショッカーはなぜ幼稚園の送迎バスをハイジャックするのか」という問題がありますが、これと同じレベルでストーリーを作っている気配がします。そういうストーリーがどれほどバカバカしいかということに気付いていない。言語についての知識がないのと同じように、SF的教養がないから。繰り返しになりますが、セーラー服は、そういうこともあるかもしれないなと許容できる。
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最後まで見ての感想
本格SFの大傑作としてのポテンシャルなんて褒めちぎった作品でしたが、「あれっ?」と思うようなことがちょこちょこ出てきたと思ったら、終盤から最終話にかけて腰砕けというよりは方向転換と言うべき事態が起こって、なにか違うものになってしまいました。
この後半の展開がうまく行っていれば「一粒で二度美味しい」という結論になったかもしれないのですが(それぐらい序盤はしっかりしていた)、率直に言って終盤の流れはうまく行っていなかった。ちゃんと考えられていなかった。尺が短かったことが制約になったことはわかるけれども、単なる能力不足という感じが強くします。
なんでこんなものが作られてしまうのか。私が思い出したのは、日本映画の黄金期の終わりでして、市場が「成熟」と言えば耳には心地よいけれども要するになれ合いになって、映画にちゃんと向き合っていないという感じがする作品がたくさん生まれた。あれと同じことが起こっているんだろうな、と感じています。こういうのはダメなんだ、というのが日本映画の教訓なわけですが。
監督の村田和也は、やはりSFとしてダメだった『翠星のガルガンティア』の人。
脚本の野崎まどはライトノベル作家で、こんな感じの人らしい。
音楽はグレードの高いもので、よかった。
CGによる作画は人物以外の描写、特に異世界関連のイメージが素晴らしかった。人間の描写はまだ技術として未熟という感じもしますが、これはどんな技術であっても、実写であっても無理だろうという思わせるような展開も多かったんで。
M・A・Oの演技がちょっと変だな、この人には珍しく調子が悪いのかなと思っていたのだけれども、最後まで見て、それなりの根拠がある演技プランだったんだなとわかりました。逆に彼女が演じる徭沙羅花がもっと普通の役人として描かれていたら、後半の展開がもっと気持ち悪くなっていたでしょう。
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6話まで見ての感想
半年ぐらいからアニメを集中的に見始めて、以来ずっと思ってきたのは、とにかくいいSFアニメが少ないということでしたが、この『正解するカド』は、少なくとも6話までの範囲では、日本アニメという枠を超えた世界的なレベルでの「ファースト・コンタクトもの」の大傑作としてのポテンシャルを感じさせます。非常によく考えられている。
これはいったいどこから出てきたのか。「木下グループ」がキーワードなんでしょうか。詳しくないのでわかりませんが、とにかく「アニメ業界」の外から来た感性があるように思えます。
この先の展開がどうなるのか不明ですが、たぶんこの異世界からの訪問者のネガティブな側面が明らかになり、交渉人として活動してきた主人公が板挟みになるという流れになっていくのでしょう。
ここまでファースト・コンタクトものとして唯一弱いなと思ったのは、{netabare}この異世界からの技術を主人公・科学者・政治家たちがあまりに安易に受け入れてしまったこと。エネルギーが無尽蔵に使われると地球環境への悪影響がありうる、というセリフが一度発せられたていどで、それ以上の考察は誰も行わなかった。でもそれ以外にも、この技術が人類に対して与える悪影響はいろいろと考えられるし、それらの問題点の指摘は絶対にあったはずだけれども、国連からのプレッシャーに対抗するという総理大臣の決意、というプロットで押し通されてしまった。とはいえ、もし現実にこういうことが起こったら、こういう失着も起こりそうだな、という現実味はあります。{/netabare}
作画・音・演出はいずれもクリーンで気持ちいい。閉じたアニメ・ファンのコミュニティではなく、外の世界に向けて作られているという印象があります。アニメっぽい設定と演技で浮いていたキャラクターが数人いるのがちょっと残念。