ムッツリーニ さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
誰もが一度は憧れる
男の子なら小さい頃はヒーローに憧れたでしょう。
小学生になり将来はプロのスポーツ選手になると信じたでしょう。
中学生になると両親はなんか特別な血統のなんかあれで不思議な力に目覚めると願ったでしょう。
高校生になったら可愛い彼女となんかアレしたり、突然教室に乱入してきたテロリストを撃退するとかの夢を見たでしょう。
そんな妄想垂れ流しのチラ裏は丸めて捨て、大人になった少年は言うのです。
「ラノベ作家になって一発当ててやるぜ」
あ、でも今は「小学生の憧れの職業ランキング」にユーチューバーが載る時代だから、別に作家にならなくてもいいのか。
再生数を稼げばいいんだから、作家になるより楽かもね。
なに、有名になるなんて簡単さ。とにかく奇抜な事をすればいいんだ。
よし、そうと決まれば、まずは部屋を燃やす所から始めよう。
さて、妹が好きすぎて近親相姦も辞さない作家こと伏見つかさ氏による新たな妹ラノベ。
なんつーか、タイトルのインパクトが凄すぎてアレですね。物の売り方を解ってる感じで凄くあざといというか。
とにかく概要を。
今一売れてないラノベ作家の主人公とPN:エロマンガ先生ことイラストレーターの妹が邁進するラノベ街道を、グレーでシュールな業界ギャグと少しのエロスで描いたラブコメ。
この作品は一応ラブコメというジャンルで括られてはいますけど、登場するヒロイン達の好感度が始めからMAXなので、ラブコメというよりはギャグ小説に近いです。
目的も「愛し合う二人が愛と絆でもってなんやかんやする」のではなく、あくまでも小説家とイラストレーターとしての目標と、兄妹家族としての目標が前提にあって、ラブがコメしてチョメチョメするのはおまけだというスタンスは、氏の前作である「俺妹」よりも好感が持てます。
極論すると「俺妹」って、ピーキーな妹に貢ぎ尽くすドМシスコン男の本懐を描いた話であって、過程的にも最終的にも今一共感を覚え辛い内容だったのですが、今回の主人公はやっぱり重度のシスコンであることには変わりないですが、まず社会的道義的な責任を果たそうとしていて、死んだ両親の代わりに妹を養うために作家をしていたり、母の連れ子である妹に一目惚れしていながらもあくまで家族として接しようとする姿は好感が持てるし、そのせいで奇妙なすれ違いが生じるのもまぁ味として許容できる範囲ではあります。
しかしながら前作からの反省としてなのか「義理」というワードを持ち出し、さらに前作のような夫婦枠という要素を排除してまで兄と妹をくっつけたいという骨子は変わらないようなので、そこが不満ではあります。
アニメとしてはもう一つ不満がありまして、原作ではラノベ作家がラノベ作家を描いているだけあって、いくらかの誇張はあるものの妙な実感がこもった文章で実在の作家さんや作品を羨んだりネタにしたりする場面が頻出するのですが、アニメ化に際してはそのほとんどが削られているのが残念ですね。権利関係上難しいのもわかりますからあまりとやかく言うのも野暮ですが、この作品のウリの一つでもある部分だし、作品にリアリティを与えていた要素でもあったので削らないでほしかったと思うのが正直なところ。
まぁ、所謂中の人ネタという事でSAOや狼と香辛料が出てきただけマシと思うしかないのか……
逆にそれ以外の部分に関してはかなり頑張っている作品で、細かい表情や仕草や声優さんの演技がいちいちあざとい。
イラストレーターさんが「かわいくなれーと念じながら描いてる」と言うのをよく聞きますがこの作品はまさにそれで、作品全体がそう念じながら作られているかのようで、特に妹の狭霧ちゃんにはかなりフェティッシュな愛を感じます。
まぁシナリオが蛇行しているのと、原作者が妹を好きすぎる点に目を瞑れば、良質な萌えアニメとして楽しめるかなと思いますね。