岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
21gの魂を求めた物語は、それ以上に重い想いを以て
原作未読。<harmony/>に比べると戦闘シーンや屍者のCGなど動きのあるシーンも多々あるので、全体的に劇場版映えする作品だと思う。
作品のテーマや内容は<harmony/>同様に難解。ただ19世紀末の世界観や、屍者を復活させるという物語の舞台設定はとても魅力的だった。キャラクターデザインも儚げな印象のフライデーや、悲哀に満ちたハダリー・リリスの表情などかなり力が入っていたと思う。
物語は序盤の世界観の説明からロシア・日本へのヴィクターの手記の探索までは比較的スムーズに理解することができた。特に日本での鎧の屍者との戦闘シーンなどは、和とスチームパンク的な要素が相まって印象深い場面になった。
ただ日本を去ってから物語の展開が急にスピード感を増し、若干着いていけなくなった。Mの陰謀であったり、The Oneの想いが明らかになっていくわけだが、MはともかくThe Oneの復活と花嫁を欲する野望はあまりにも突飛だった感が否めない。ただ己の魂の在処を求めるリリスをその器にする形は面白かった。
物語のラストもフライデーはともかく、ワトソンがどうなったのか説明不足な印象。ホームズと一緒とことはそういうことかと何となくは察するが、全体的に原作や原作に関連する作品への理解があってより楽しめる内容なのかもしれない。最後のフライデーの微笑が作品の全てを物語っていた気もする。
全体的に伊藤計劃氏の言葉は力強く、作品に大きな影響を与えていると思う。また伊藤氏の死後、彼に代わって小説を完成させた円城氏の伊藤氏への強い想いが特にエンディングテロップでのフライデーの言葉に込められていたように感じる。
一度ではなく、何度も繰り返し見ることで伊藤氏が伝えたかったメッセージをほんの少しでも感じることができるのかもしれない。21gの魂を求めた物語は、21g以上に重い想いを以て生まれるのかもしれない。