midas さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「君の名は」は、いつまでも残る失恋の慢性的な痛みへの特効薬
「君の名は」の本質
世界に生きている人の大半が経験する、生きているうちで最もつらい痛みの一つである、初恋を失恋する喪失感がこの映画の本質だ。
私は、少年時代に20回ちかく骨折しているし、前歯を折った次の日は、口の中が骨髄ゼリーでいっぱいになった。
だが、失恋の痛みは、肉体的な痛みとは比べ物にならないほどつらい、他の人はわからないが、私は一生忘れないと今は感じている。
本当に彼女を愛していたのか?
彼女を愛している自分が好きなだけじゃなかったのか?
環境が悪かった
世の中が悪かった
応援してくれる人がいなかった
など失恋の原因は様々だ、終わりの無い思考の迷路を延々と漂う、そうしている内に私は、もしも、初恋を成就したらどんな未来があったのかについても考えるようになる。
思考のなかは幸せでいっぱいになる。だが、その思いは時間と共に消えていく、初恋の思い出や情熱が消えていく感覚は、「君の名は」のなかで、相手の名前が思い出せなくなる感覚にとても酷似している。
「いつまでも取っておきたい」「思い出したい幸せな思いを忘れたくない」と思う自分と、「思い出しても仕方が無い」「あの人を思い出すのはつらすぎる」「早く忘れたい」と思う自分がいる。
いつの間にか相手の名前を意識的に思い出さないようにする自分がいる。記憶の消し方や、原因は違うが、思いが消えていく感覚は、映画の中で相手の名前を消失していく感覚にとてもよく似ていた。
「君の名は」が大ヒットしたということは、私以外でも同じように感じる人がいたのかもしれない。
「君の名は」は、いつまでも残る失恋の慢性的な痛みへの特効薬
私が失恋したときは、世界を恨み、世界の人たちが私たち二人を祝福してほしかったと、心の底から思った。
そんなことはめったに起きないし、もしかしたら絶対にないことなのかもしれない。だが、この思いは、初恋の失恋を体験した大半の人の深層心理のなかにある願望だ。
実際には、当事者二人が乗り越えていくことであり、愛さえあれば、世界の祝福など関係の無いことなのかもしれない。だが、幼かった私、もしかすると今も、心の底では世界の人に祝福してほしいと願っている。
{netabare}「君の名は」は、不思議な力によって、「世界の人たち(ご先祖様を含め)」が、二人のつながりを肯定していることを観客に伝えてくれる。 {/netabare}
私では叶わなかった願望が見事に映画で表現されている。あのときの自分が、この道で正しいんだと、全力で信じられる道を進んだ結果を見ることができる。
私の最もつらい痛みは、他人のそれもアニメの「if」ストーリー見ることで癒された。カタルシスを味わうことができた。