どらむろ さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
未知との遭遇SFで社会派思考実験が超面白い!(8話までは)。最終的に評価難しいけれど、キャラ萌えは可。
東映アニメーションのオリジナルアニメ、前日譚含め全13話。
ジャンルは「ファーストコンタクト」
異方(いほう)という、宇宙の外の高次元から来た?存在がもたらす超技術の影響で、人類社会が激震する様がエキサイティングな、社会派思考実験SFでしょうか。
重厚かつダイナミックな展開と、意外とキャラ萌え(女子も、男子も)可能で観易いです。
…8話までならば2017春随一のワクワク感があったSF大作なんですが、最終的な評価に困る作品でした。
個人的に、嫌いでは無いです。
{netabare}『物語』
日本の玄関口・羽田空港に、突如「カド」と呼ばれる謎の物体と謎の人物「ヤハクィザシュニナ」が出現!
それは「異方」という宇宙の外の高次元(正確には違うらしいが、人類には理解できない)の存在で、人類とコンタクトを求め、様々な超技術を提示してくる…
日本政府の交渉官・真道幸路朗は、人類代表として異方と交渉&交流していく。
…エンタメ的な見所としては、真道&ザシュニナ、真道&沙羅花、そして真道&花森の関係性が「萌える」ところ。
真道さんハーレム、うちふたりは男…いける!
ザシュニナとは異文化コミュニケーションとしてワクワク感と共に和みますし、沙羅花さんとはまさかのラブコメの波動を感じる、花森の後輩萌えも良いですなぁ♪
特に8話までは、重厚なSFと親しみ易いキャラ萌え両立していて面白さに拍車をかけていた。
…ここは本作の大きな強み。SF以外でも楽しみ所があるに越したことは無いので。
実は本作はラブコメでもあり。
真道さん巡って、ザシュニナVS沙羅花という争奪劇だったり…
まず、カドの圧倒的スケール、ザシュニナの異質感、何かとんでもない事が起こった感ハンパない。
黒船来航どころの騒ぎではない!地球外どころか、宇宙外の高次存在ですと!?
0話のプロジェクトXめいた話で、真道の人物像とスタンスが何となく分かりつつ、謎の存在ザシュニナの目的や、彼が提示する超技術で、人類はどうなってしまうんだ!?
本作の大きなテーマは主に2点か?
「規格外のリソースを得てしまった人類社会の変容や、向き合い方」と
「更に進めて、人間はどう生きるべきかという哲学的な問題提起」
序盤からのエキサイティングな展開は、それを期待させてワクワクする。
まず人類社会の描写は…
超技術のスケールが凄まじく、小さな玉一個で全人類の電力賄える「ワム」等々、想像を絶する。
ドラマは主に、人類には過ぎた力を巡って、人類社会がどうなってしまうのか?という社会思考実験めいた展開に。
「食べきれないパン」の例え、もしリソースが無限なら、資本主義やら共産主義やらどうでもよくなりそう。
(スタートレックの世界観に近い、物質文明カンストして、経済とかどうでも良くなっている)
「それでも人類は争う、欲望に限りは無い」と決めつけるのは陳腐な予想だと思う。
それは人類が歴史上未だ「食べきれないパン」を得た経験が無いから。
一時的に得ても(失うかも)という潜在的な恐れから非寛容になっている、本当の意味で食べきれないパンがあったら?さてどうなる?
…ここら辺は、混乱するだろ?以上の答えを出せていない。
多分作者も分からないだろうし、描きようが無かったんでしょう。(描けてたらノーベル賞取れそう)
好意的に見て、視聴者ならどうなると思う?と考えさせられるという事で。
(ここら辺の丸投げ感、かわぐちかいじ作品っぽい)
そこから話の展開は、「沈黙の艦隊」等のかわぐちかいじ作品っぽい流れ。
やたら有能な日本政府の決断や、やたら日本に厳しい国際社会の反発云々、かわぐちかいじ作品で見たような。
(漫画版の掲載誌は講談社のモーニングツー)
ここらの社会派ドラマは、まぁまぁといったところ。
各国の動向など、色々と疑問も多い。
政治劇のテキトーさは、エンタメ的には正解でしょう。
でも、1クールであまり深入りし過ぎると、余程力量のある脚本家でないとボロが出やすい展開、良い意味のご都合主義で深入りしなかったのは、むしろ良い傾向かも。
「ワム」の衝撃冷めやらぬ状況で更にヤバい超技術投下されて、人類はどうなってしまうんだ!?
中盤のハラハラ感は素晴らしかったです。
もう一つのテーマ(というか製作者的には、こちらこそ本命?)
「人間はどう生きるべきかという哲学的な問題提起」
は、今一つ踏み込めてなかった。
好意的に見ると、8話までは思考実験でグイグイ引き込まれる面白さで、考える余裕が与えられない感じ。
…9話以降雲行きが怪しくなり、最終的には当初のワクワク感が萎んでしまうのですが…
人間はどう生きるべきか、というテーマ的には、終盤ラストもむしろ悪くはない気がします。
ただ、8話までの大スケールからくる期待と、噛み合わないのが問題。
ヒロイン・沙羅花(さらか)のドラマが情緒に訴えるタイプ、それ自体は悪くないのですが、前半の人類の命運がどうなる!?という大スケールから、一気にショボくなった印象受けてしまう。
個人の情緒的な思想で、全人類の選択決めちゃうのは、スケールしょぼい。
ラストの切り札は驚きましたが「予想は裏切るも期待も裏切られた」感。
理想の展開は、前半の超技術による社会や個人の思想の変容を丁寧に描きつつ、そこから踏み込んでの哲学に昇華されていれば、名作だった。
本作の構造的欠陥は、どちらも中途半端な事かもしれない。
…そもそもこれ、1クールでは絶対ムリでしょうし。
漫画だと単行本40巻以上になりそう。
総じて
8話までは超面白かった!以降ラストは肩透かし…でした。
多分ですが、作者(脚本家の野﨑まどさん?)的には9話以降こそが本命であり、8話までの全人類が翻弄されるド派手な思考実験は前座に過ぎないのかな?
…でも。大方の視聴者的には、8話までの社会思考実験の大スケールをこそ期待している(というかこの構成だと期待せざるを得ない)ので、終盤が面白かろうはずもない。
テーマは優れているが…ちとハッタリを利かせ過ぎたような?
うーむ、評価が難しいです。
終盤とて期待とは違えど悪い結末では無いと思うし、途中まではバツグンに面白かったし、キャラ萌えもある。
総じて駄作とまでは思いたくないところです。
(物語評価は迷家と同じ、散々迷って妥協点)
…余談
未知との遭遇アニメで思い出されるのが
「学園戦記ムリョウ」です。
人類の成熟を理想的に描き、銀河連邦からの干渉に向き合っていく、ある意味思考実験アニメであった。
作風は全然違いますけど、ムリョウは不朽の名作です。
私的に、正解するカドに潜在的に期待していた思考実験&哲学は、学園戦記ムリョウみたいな感じが理想でした。ムリョウの方が、人類が正解できるか試されていた。
そういえば両作とも、バトルアニメだw
『作画』
CG用いたカドや異方の存在感が素晴らしい。
感覚的に、異質だと伝わってくる。
キャラデザもCGながら、違和感含めて作風にマッチ。
沙羅花の可愛さなど、絵的な萌えもバッチリ。Tシャツの「くり」のインパクトがw
『声優』
三浦祥朗さんは真道幸路朗だけど、多数の脇役演じてこられたベテラン、深みのある魅力が伝わった。
寺島拓篤さんのザシュニナの異質な感じなど、好演多し。
全般に配役に安定感あって良かったです。
M・A・Oさんのヒロイン力高し、博士の釘宮理恵さんは流石のはっちゃけぶりでした。
沙羅花の娘ちゃんは、芹澤優さん。プリパラのみれぃぷり♪
『音楽』
主題歌もBGMも、壮大な感じがして引き込まれる。
楽曲面で名作感が…
『キャラ』
30歳エリート官僚・真道幸路朗が良い感じのスーパーマンぶり、それでいて絶妙な朴念仁。
交渉官主人公に相応しい逸材でした。
ザシュニナが惹かれるのもわかる。
ザシュニナは不気味さよりも、無垢な愛嬌があり、異文化交流の外国人めいた面白味が。
後半はホモもとい小物化は残念、いや、真道ラブは全然OKですけど!
後半の彼の失速でキャラ評価ややダウン。
24歳エリート官僚の沙羅花ちゃんは良い意味で官僚らしくない、ムキになったり、デレたり、良い意味であざとい。
本作の良さはヒロインの可愛さでした。2017春でも萌え的に他作品にヒケを取らぬ。
26歳エリート官僚(エリート官僚多いな)花森君も後輩的な可愛さが。
女性向けな萌え…いや!別に男子視聴者でも微笑ましいと見てました。
彼は「さすがお兄さ…もとい流石真道さん」するのも役目。
いや~、まさかの大勝利?
42歳で養父になるとは!
くぎゅ声の天才科学者・品輪(しなわ)博士のインパクトも大。
いかにも天才!というイメージ。
彼女は異方に喜んで行きそう…
故・小渕恵三総理っぽい、日本国総理の指導力がすごい。
有能…なんだけど、些か短慮な気も。
まあそのお陰で話がサクサク進んだ。
この他、マスコミや外資はいかにもなキャラで微妙。
沙羅花の父と兄が良いキャラでした。
そしてまさかの娘ちゃんかわいい…
あれですかね、サイヤ人と地球人の子供は親のサイヤ人より強い的な?{/netabare}