「残響のテロル(TVアニメ動画)」

総合得点
82.3
感想・評価
2161
棚に入れた
11417
ランキング
371
★★★★☆ 3.7 (2161)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

雀犬 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

未来なき者たちのレゾンデートル

残響のテロルはスピンクスを名乗る2人の少年テロリストを主人公とするクライム・サスペンスです。
主人公の名前がナイン(9)とツエルヴ(12)なのは9・11テロと関係があるのかないのか。
OPを見ただけでこれは面白いに違いないと思わせるクオリティ。
実際11話をあっという間に見終わりました。

2人の犯行動機と最終目的は伏せられており、
その謎を視聴者は警視庁の敏腕刑事・柴崎と共に追いかける形で真相に迫っていきます。
中盤からは無能アンド無能ヒロインのドジと
かつての仲間であるドS少女ハイヴの策略で物語は混沌としてきます。
ようするに2人のお騒がせ女で間を持たせて
2つの謎を終盤まで引っ張る構成になっています。

題材が題材だけに、青少年に悪影響を与えるなどと批難されないよう
かなり気を使って制作しているように感じます。
物語の核心である動機と目的はあまり現実味のあるものではなく、
むしろフィクションであることを強調しているように思います。
スピンクスは僕らが社会に持つ不満を代弁するヒーローではありません。
心理描写は少なく、感情移入しにくいように描かれていますが
これは意図的で過剰に共感させないようにしているのかもしれません。
またスピンクスは一般人の命を奪わないというポリシーを貫くのですが
かなり無理のある設定でリアリティーと緊迫感が大きく損なわれています。
一方で無実の人が被害に合う、テロの負の側面の描写は非常に少ない。
これらの問題は視聴制限のないTV放映作品であることが足枷になっているように感じます。
これほど気を使っていても中国では暴力を賛美しているとして規制対象になっているらしく、
アニメ表現の限界なのでしょうか。

以下結末を含むネタバレ

{netabare}
物語の終わりにはスピンクスの目的が
かつてアテネ計画という非人道的行為が行われいたことを白日の下に晒す
復讐劇だったと分かりますが、それだけでは合点のいかないことがいくつかあります。
テロで一般市民を巻き込む必要はなかったし
犯行予告なんてリスクの高いことをする必要もなかったはず。
復讐するならアテネ計画の元関係者を直接攻撃すれば済む話ではなかったのかと。

この疑問を解く鍵はナインの最後の言葉
「俺たちを、覚えていてくれ、俺たちが生きていた事を」
という言葉にあると思われます。

残り少ない余生の中で自分が生きた傷跡を日本に残すこと、
それこそがナインの真の目的であり、レゾンデートル(存在理由)だった。
そう考えると全て辻褄が合います。

派手な爆破テロや挑発的な犯行声明をしてきたことも、
わざわざ出頭して記者会見を要求したのも
自分達の存在をこの世に知らしめるためだったと。
最後の犯行予告は顔出ししているところにも歪んだ願望が見て取れます。

ナインの本質は間違いなく悪であり、
非人道的な人体実験が生み出したサイコパスです。
(だからこそテロの負の側面はきちんと描いて欲しかった)

ナインの言動は投薬によって人工的に生み出されたサヴァン症候群の子供であり、
人格破綻者であるという前提でないと理解しにくいかもしれません。

一方ハイヴの行動原理は分かりやすい。
ツエルヴとナインを負かすことが生きる理由です。
特に施設内でただ一人敵わなかったナインに勝つことに彼女は異常な執念を持っています。
彼らとのゲームが続行不可能になると自殺してしまうのですが、
この不可解な行動も存在理由を失ってしまったからだと解釈すべきか。

ではツエルヴの存在理由は何だったのか?
その答えは「何もなかった」だと思います。
強いて言えば兄のように慕うナインの復讐劇を共に果たすことでしょうか。
しかし彼もついに生きる理由を見つけます。
それが彼を必要としてくれる女性、リサです。
もちろんナインもツエルヴを必要としているが彼は一人でも成し遂げられる能力があります。
一方リサはか弱い。お互いに寄り添い、彼女を支えることに生きがいを見出そうとします。
光なき世界で生きてきたツエルヴにとって
たとえ小さな光であっても、暗闇を照らす月のように感じられた。
役立たずのダメヒロインも実は重要な役割を担っているわけです。
(それにしても、もうちょっと活躍してくれて良かったと思うなぁ・・・)

これは僕の想像ですがツエルヴは作中で薬の後遺症に苦しんでいる様子が一切なく、
実は生き続けることができたのではないかと思う。
そう考えると彼が米軍に殺される結末はやるせないものがあります。
{/netabare}

全体を通して振り返るといくつか不満はあるものの
視聴中はあまり難しいことを考えるはずもなく、
あの観覧車のベタな演出で「このシーンは最高だな!」
とか思っちゃうくらいちょろい男なもんで、このアニメにはかなり満足しています。

ドでかい花火を打ち上げても製作費があまり変わらないのはアニメの良いところ。
不謹慎と言われようと、やはり爆破シーンは何ともいえない高揚感があるものです。

世間評価はあまり高くありませんが、流石ノイタミナと感心する作画と音楽、
続きが気になって仕方ない感覚が味わえる良作だと思います。

投稿 : 2017/10/25
閲覧 : 438
サンキュー:

22

残響のテロルのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
残響のテロルのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

雀犬が他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ